第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
あーあ、面白くないなぁ。すっげぇ面白くない。いつもみたいに自主練しようと思って、ツッキーと日向連れて第3体育館に行こうとしたら、立て続けに彼女に言い寄る男ふたり。
月島がソウイウ目で悠里センパイのこと見てるのは前から何となく気付いてたけど、まさか研磨さんもとは、意外だった。あんな、ゲームにしか興味ありません、みたいな顔してるくせに。
「はらたつ...」
俺のもんだってこんなに見せ付けてるのに、言い寄ってくる虫ケラにも、その羽虫を追っ払うでも叩き潰すでもなく、ただ受け入れてるだけの彼女に。
少しの苛立ちを抱えたまま、日向にも月島にも声を掛けず、俺は第3体育館の入口の段差に腰掛けた。
こんなん、ダサいのもわかってる。ガキ臭いって、わかってるのに。それでも、悠里センパイをずっとずっと俺のものだけにしていたいと思ってしまうのは、俺のエゴだろうか。
あの天真爛漫な笑顔を、他に向けないで欲しい。愛嬌を、振りまかないで欲しい。本当ならそれは、全部俺が独り占めしたい。
『お、リエーフ発見!』
体育館入らないの、と声を掛けるのは今いちばん会いたくて、でもいちばん会いたくなかった、人。
「悠里センパイ...」
『え、ちょ、なんでしょんぼりしてるの!?
黒尾に怒られた?それとも他の誰かに...わっ』
慌てて俺の前にしゃがみ込んだ小さな体を、すかさず抱きしめる。ちょっとリエーフ、と反抗的な声が聞こえるが、お構い無しだ。
「あー、もう俺ほんとにカッコ悪い...」
『えっと、話の前後が分からないんだけど』
抱き締められながらも、よしよし、と手を伸ばして俺の頭を撫でてくれる悠里センパイ。年下扱いされるのは嫌いだけど、今だけは甘んじて受けようと思う。
「さっき、研磨さんと月島と話してた」
『あぁ、うん、なんか流れで2人に名前で
呼んで欲しいって言われちゃったんだけど、』
リエーフが嫌なら断ろうと思って。
嗚呼。
そうやって、あなたが俺を甘やかすから。
「全然っ、俺はへーきです」
それでもあなたを縛りたくないから。みんなと笑ってる顔が、大好きだから。こうやって、強がって、嘘をついて。それであの時こう言ってればって、後悔するんだ。