第1章 高 校 卒 業
みんなが待ってるでしょ、と名残惜しそうなリエーフをべりべりとひっぺがし、体育館へとリリース。まさかこのタイミングで彼氏ができるとは思わなかった。そうか、あのリエーフが彼氏か。
ポケットの中のスマホがヴヴと振動し、通知の主はリエーフ。大好きです、という文字と共に、ハートがたくさんの猫ちゃんのスタンプ。不覚にも、可愛いと思ってしまう。リエーフのメッセージにありがとうのスタンプを返し、それから部活頑張ってねと添えた。
きっと今頃体育館は大騒ぎだろう。何せわたしは高校3年間の告白を全て‘部活に集中したいから’と断ってきたのだ──と言ってもほんの数回だったが──。卒業と同時に彼氏ができちゃいましたなんて、我ながら贅沢なやつだったなぁと思う。
それから黒尾とのやり取りを開き、今から向かうねと送る。
そして。
「「「リエーフと付き合った!?」」」
『うぃっす...』
何があったかを詰められているのが、今である。
待て待ていいのかあいつ馬鹿だぞ柏木には釣り合わないって、と夜久。根はいい奴だし努力家だし何よりあの見た目だからね、と海。そして黒尾はというと、
「あいつでいいなら俺でも良かったじゃあーん」
机に突っ伏して嘘泣きをしている。
『黒尾は無いかな』
「「俺も黒尾は無いと思う」」
んだよみんなして!と今度は拗ね泣きを始める黒尾。
『そんな訳で、みんなには迷惑かけるかもしれないし、
相談の連絡もすると思うんだけど、
温かく見守ってくれたらな、なんて...』
「生暖かい目でならいいですよ」
『あ、黒尾には頼まないかな』
「もうほんとに柏木俺に当たりキツい!」
そうして、高校3年間の思い出と、これからのことを290円のドリンクバーとピザとパスタと共に語り明かし、それぞれの進路にエールを送り、その日は解散となった。
帰り道、最寄りは黒尾と同じなので、必然的にいつも通り一緒に帰ることになった。
「なぁ、柏木」
さっきから口数が少ないと思っていたら、黒尾が口を開く。いつものふざけた調子とは違う声に、こっちまで緊張する。
「もし俺が先に言ってたら、
俺の彼女になってくれてた、か?」
は、?