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大人になれないわたしたち《ハイキュー!!》

第7章  夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)



それから特に深堀りして話す間もなく試合が始まり、黒尾とは2人になれるタイミングがなかなか来ない。試合の記録やらドリンク、テーピングをしていればあっという間に時間はすぎていく。


さっきの言い方だと、まるでつい最近私が名前で呼んだみたいなんだよな。高校生になってからはずっと苗字で呼んでるし。孤爪だけはわたしのこと名前で呼んでくれてるけど、黒尾も気づけば‘柏木’だったしなぁ。


ブロックアウトでてんっとコートから足元転がってきたボールを拾い、投げ返しながらうーんと悩む。


『てつろう、けんま、か......』


あの頃は息をするように簡単に呼んでいた名前を、口の中で転がす。ふたりとも、いい名前。でも今更元に戻そうって言うのも、なんかちょっと違う気もする。


そうして結論が出ないまま、じめじめとした時間は過ぎ、お昼になって、夕方になって、あっという間に日が暮れた。


明日で撤収ということもあり、メインの体育館脇に置いてある音駒の荷物置き場を整理する。ボールの空気は今入れちゃえばもう使わないな、テーピングはまだ出せるようにしておこう。


ぎゃーぎゃーと賑やかな方に目を向ければ、逃げる孤爪を日向くんがトスクレトスクレと追いかけ、孤爪への興味なのか珍しく影山くんも混ざって追い掛けている。


まぁ、孤爪だし。試しに、呼んでみるか。


『こら逃げるな、けんまーっ!
 たまには相手してあげなさーいっ!』


ぴた、と孤爪の足が止まり、追いかけていた日向くんはそのまま背中に顔面衝突。だが孤爪はそれすら気にも止めず、ずんずんとこっちに歩いてくる。


『あ、え、こ、づめ?』


「悠里、まだ寝ぼけてる?」


『どう見ても完全に覚醒してるよ』


「じゃあ、どこか具合悪い?」


『ピンピンしてるね』


じ、と穴が空くほど真剣に顔を見られ、思わず首ごと視線を外す。と、なんでそっち向くの、と両の頬に手を添えられ、顔の向きを戻される。孤爪の視線が刺さる、顔が、近い。


『こづめ、?』


「違う、研磨だよ」


『けん、ま』


「そう、間違えないでね」


にぃ、と孤爪の薄い唇が弧を描き、無邪気に、そしてとても満足そうに笑う。それから日向くんたちの元へと戻り、何やら話し始める孤爪。


あんな顔して笑うんだ、なんて。ちょっと思った。


 
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