第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
部屋に戻ると、マネちゃんたちはとっくに消灯していて、すやすやと規則正しい寝息すら聞こえてくる。時刻はまだ日付が変わる前、この時間に寝てたらあれだけお肌も綺麗か、そりゃそうだ。
自分の布団に潜り込めば、通知音をミュートにしたスマホがヴヴと揺れる。差出人は、リエーフ。
クロと虎にいじめられてるよ
一緒に送られてきた動画の再生ボタンを押す。がやがやと賑やかな部屋、うつ伏せのリエーフに馬乗りになって枕をその頭に叩きつけるのは黒尾で、山本がおしりを踏み付けている。
音声がごちゃ混ぜで何が何だか分からないが、なんでお前が柏木さんをとか、リエーフの分際で3億年早いとか、かろうじて聞き取れた。っていうか、これ文章打ってるのもしかして。
孤爪が入力してるの?
そうだよ、クロにやれって言われた
人使い荒いね、早く寝なよ
うん、悠里おやすみ
おやすみ
そこまで打って、リエーフのアイコンなのに中身が孤爪で、なんだか変なのと思い声を殺して笑う。今頃、まだリエーフはしばかれてるんだろうか。
改めて、リエーフや芝山たちが今の音駒に来てくれて本当に嬉しいと思う。ほわほわと、優しい気持ちに包まれながら眠りについた。
合宿6日目は目覚ましのアラームより先に雨の音で目が覚めた。真夏の雨の嫌なところは、肌にまとわりついてくるとんでもない高さの湿度。それでも、まだ東京よりこっちの方がマシな気がする。
そんな雨はお構い無しに、じめじめの空気を振り払うように声を掛けながらアップにランニングをするみんな。その明るい掛け声のお陰でこっちもちょっとだけ気持ちが晴れるようだ。
「よう、柏木、あの後寝れた?」
ランニングをサボっているのか、ニヤニヤしながら話しかけてくる黒尾。今日もあのとち狂った寝癖は健在だ。
『寝れた、体調も割かし良い
ていうかうちの彼氏いじめすぎなんですけど』
「あれはアイツが100悪いだろ」
絶対そんなことない黒尾が悪いから、と反論すれば、わざとらしくおやおやと首を傾げる黒尾。
「今日は名前で呼んでくれねーの?」
『今日は、って、別に呼んだ記憶ないし...』
変なの、と一蹴すれば、黒尾の横顔が寂しそうで、それはそれでなんだかモヤモヤした。