第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
最悪だ、よりにもよってリエーフがイチャつきに部屋に連れ込んだところを黒尾に見られた。キスしかしていない──というか身体的にキスまでしかできないが、そもそも合宿ですることではない──が、メンタルにはあまりよろしくない。
リエーフの捕獲網から逃れ、黒尾の持ってきた端末を開く。電源ボタンを押せば、ディスプレイがパッと明るくなる。真っ赤な横断幕には音駒のコンセプトである‘繋げ’の文字、その前にはつい半年ほど前に撮った最後の集合写真。
試合で集合写真を撮る度に、新しいものへと差し替えてきた。初めては2つ上の先輩たちとの最初で最後のインターハイ、その次が1つ上の先輩たちの春高と、インハイ。
『リエーフたちが』
「なんスか?」
『リエーフたちが、
わたしたちの2つ下の代でよかった』
思わずこぼれた本音は、不遇の時代を知っているから。運動部によくある体育会系のノリと、先輩たちが絶対的であるという圧政。よく、孤爪はやめなかったなと思うけど、きっとそれは山本と福永と一緒だったから。
もし、リエーフが同い年や、孤爪の同級生だったら。上の代に噛み付いて喧嘩どころじゃなくて、問題を起こしたら部活停止とか、酷い時には停学とか。それぐらい、音駒は一時期しんどかった。
『ありがとう、バレー部を選んでくれて』
「えぇ〜いきなりなんですかぁ、
そんなにパレーしてる俺が好きです?」
『うん、だいすき』
机に腰かけるリエーフに、正面からぎゅうっと抱き着く。大きなからだ、お風呂上がりの石鹸と柔軟剤の香り。それはきっと、私も同じ。本当に大好き、ありがとう、と繰り返せば、すすすとリエーフの腰が引ける。
『ん?ぎゅーするのやだった?』
「いえ、違います」
勃ちそうだったんで、と言いながらわたしを抱き寄せる。ぐ、とお腹に押し付けられるそれは、俗に言う半勃ちという状態。慌てて肩を押してみるが、抱き締める力には叶わず、今度は逆にわたしが動けなくなる。
「はー、早く帰っていちゃいちゃしたい...」
『今してるじゃん』
「違う!もっとしたいの!」
顔を見合せて笑う。それから、もう少しの間だけハグをして、最後にキスをひとつだけして、わたしたちはそれぞれの部屋に戻った。