第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
うわ、と黒尾の驚く声が聞こえた、気がする。
頭の下には程よく硬くて温かい枕──良く考えれば黒尾の左の太腿、かもしれない──があって、高さもちょうど良くて。端末から流れる試合の音と、みんなの会話が心地好いBGMになっていた。
「柏木ィ、このままだと、
俺がリエーフに怒られるんだけど」
『じゅ、っぷ、ん......』
お前絶対起きないだろ、と呆れた声。へへへ、バレてる、なんて思いながら、目を閉じているのはとても気持ちよくて。
腹痛くないなら良いけどと背中から腰にかけてをさすってくれる大きな手が、あたたかくて、やさしくて。ずっとこうして猫みたいになって丸まっていたい。それにはこの気温はちょっと暑いかもしれないけど。
ふわふわとする頭で、さっき話したことを思い出す。
黒尾は大学を卒業したら東京に残るのだろうか。日本バレーボール協会って言うぐらいだから、全国各地の試合会場を飛び回ったり、イベントやら企画やらで大忙しなんじゃないだろうか。
そうしたら、今みたいに簡単に会えなくなっちゃうな。
『くろぉ』
「ん?」
『ぁんまり、とおく、いっちゃ、
だめ、なんだから...けんまも、かなし、から...』
「安心しろ、お前ら置いてどこにも行かねぇよ」
なんだ、黒尾の過保護にはわたしもちゃっかり入っていたなんて。知らなかったな、と思った。
でも考えてみれば、中学は違くてもそれなりにご近所さんだからまぁ仲は良かったし、高校も黒尾はバレーをやりたいからって音駒にしたし、じゃあわたしもって決めた。大学の時は、わたしが先にここにするって決めて、黒尾がじゃあ俺もって。
なんだかんだ、近すぎず遠すぎず、この6年間もの時間をわたしの傍には黒尾がいた。もちろん、孤爪もいた。
黒尾が孤爪とわたしを大事にするみたいに、わたしも黒尾と孤爪が大事。あと大好きだし、ずっと一緒がいいな。それが無理でも、連絡は取りたいし、仲良くしていたい。いちばんの友達でいたい。
『てつろ、けんま』
高校に入ってから、お前ら付き合ってんのかよとからかわれるから恥ずかしくて、呼べなくなったその名前。あぁ、これだ、とすっと馴染むような懐かしい響き。
ふたりとも、だいすきだよ。