第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
みんなは烏野と伊達工業の試合に夢中になっているるが、フルセットだったらしく、動画時間は2時間を超えている。
端末返してもらって部屋に戻ろうと思ったのに、集中しているみんなに水を指すのは申し訳なくて、なんとなく黒尾と卒後の進路について色々喋る。
「柏木は何やんの?」
『看護学科にそれ聞くって馬鹿じゃん』
看護学科なんだから、看護師しかなくないか。
「そりゃそうだけど、
大体どの辺の病院とか決めてんの?」
『まぁわざわざ附属病院ある大学にしたし、
そのままエスカレーター式に行きたいよね』
ほとんど実習附属病院らしいしいずれ実習始まるタイミングで一人暮らしさせてもらおうと思ってる、と言えば笑いながらマジかよと黒尾は言う。
『絶対実習中に泊まりに来るなよ、
むしろ家事やって欲しいレベルだわ』
「1日3000円でやってやるよ」
『高くも安くもない微妙な価格設定』
「俺はまだしばらく実家だなぁ」
研磨のこともあるし、というそれはもうただの過保護というか保護者。孤爪だってちゃんと先輩してるし大丈夫だよ、と言えば、俺がずっとコイツの心配してたいだけ、とやっぱり過保護だった。
あいつらずっと動画見てるから俺らも見ようぜ、とスマホを横向きにした黒尾。それはこの間第2弾が公開されたばかりのアニメ映画の1作目で、それ好きなの意外だったと本音を漏らせば、研磨が、とまたいつもの。
時間もつぶせるし、と思って仕方なく観てみれば、まぁ語りベースの眠たくなるアニメで。主人公の声優さんがこれまた睡魔を連れてくるような素敵な声で、ちゃんと見ようと思っても瞼が重くなってくる。
薬飲んで痛みも落ち着いてるけど、生理中だし。まぁ普段より気も張って疲れる環境にいるから、そうなるのは自然なことかもしれないな。
徐々に重力に負ける体、三角にしていた膝から力が抜け、かくんと糸が切れたように結んだ手がほどけ、足が伸びる。
「柏木?寝た?」
『ねてなぃし.........』
首ふにゃっふにゃだぞ、と右肩を揺すられる。だがそれすら煩わしく、頼むから寝かせてくれと体が訴えている。10分だけ、と最後に言った──つもりだった──きり、わたしの視界は暗くなった。