第7章 夏 休 み 合 宿 後 半 戦(♡)
4日目の午後、少しは気温も落ち着き、夕方には昨日までと比べたらまぁ過ごしやすいぐらいになっていた。夜、お風呂も済ませ、マネージャーの部屋で寝っ転がって動画を見ていると、良さげなものを見付ける。
ちょっと出てくるね、と部屋にいた子たちに言って音駒のみんなのお部屋に向かう。コンコンコン、とノックを3回、はーいと返事が聞こえたので扉を開ける。
『おっじゃまっしまーす』
「悠里〜っ!」
すっかりいつもの調子を取り戻したリエーフがわたしに突っ込んでくる。のを華麗に交わし、孤爪の隣に座る。
『これさ、この間のインハイ予選の動画、
烏野と伊達工業ってとこの動画なんだけど』
ネットに上がってたんだよね、と言いながら動画を再生する。パッド型の端末をみんなで囲むようにして覗き込む。
伊達工業はサーブで崩してブロックで仕留めるという形式をとっており、3枚壁がでかいのなんの。その中にセッターがいる訳だから、打点は上がるはセットは容易だわで。
『すごい、あの日向くんが止められてる 』
「なるほどなぁ、こりゃ烏野も負けるか」
「おれ、こんなブロックと対面したくない...」
「リベロもよく拾うね、僕と同じ学年だ」
まさにうちの理想とするブロックとレシーブの連携、他校と言え参考にしない手は無い。みんなが持ってきた端末に夢中になっている後ろ、1人手元のスマホを眺める黒尾の横に体育座りをする。
わたしが来たことに気が付かないほど集中しているようで、珍しいなと思いながら横目で画面を見る。全然こちらの気配を察知してくれないから、段々身を乗り出してみるけど、それでも無反応。
『何見てるの?』
「うぉ、柏木あっちにいたんじゃ」
『5分ぐらい見てる』
まじかよ、と言いながら黒尾は苦笑いをした。
『まだ大学生なのに、求人見てるの?』
「んー、まぁ、そうだな、
日本バレーボール協会ってあるだろ」
そこに入りたいんだよな、と黒尾。プレイヤーは十分満喫したから、次は前線でバレーボールをやってるヤツらの後方支援がしたい、と。
試合の動画に夢中になるみんなの背中を見る黒尾は、すごく優しい目をしていて。素敵な目標だねって、考えるまでもなく自然と言葉が出てきた。