第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
ワァアカアシサンダイターン、という月島くんの棒読み、目の前にある紺色のTシャツ、触れる胸板。そうしてようやく京治の腕の中にすっぽり収まっていることが分かる。
『け、けいじ、あの、もうだいじょ...』
「柏木さんの大丈夫は、
大丈夫じゃないって学んだんですよね」
両手でぐいぐいと押してみるが、ビクともせず、むしろほっぺたがぴったりシャツにくっついてしまうほど抱き締められてしまう。やばい、何これ、羞恥、違う、わたしは貧血、そう、倒れそうになったのを助けてもらってる。
あれ、でも、ほんとにそれだけなの。
『えと、ほんとに、目眩引いたから』
「嫌です、俺がこうしてたいんで」
僕先に行ってマース、と月島くんの遠ざかる足音。京治のシャツと、腕以外何も見えない。ていうか、俺がこうしてたい、って、どういう。
「柏木さん、ちゃんと食べてる?」
『た、食べてる、けど』
「栄養足りてないんじゃない」
すす、と背中に回っていた手が腰のラインを撫でる。白昼堂々されていることに驚くが、くすぐったさの方が勝つ。
『それ、くすぐったい、あと離して』
「どうしようかなぁ、
灰羽、こんなの付けてるしなぁ」
そ、っと触れるのは首筋の赤い華。今日も隠してたけど、もしかして摩擦とか汗で取れてきてたのかもしれない。
うーんと少し考え込んだ京治は、おもむろに首筋に顔を埋め、すんすんと鼻を鳴らす。柔らかいくせっ毛と鼻息がこそばゆく、身をよじるが全然離してくれる気配は無い。
『けいじ、ちょ、ぅ』
「いい匂い」
『ば、か...っ』
相変わらず少しも引いてくれないし、押してみても動く気配はない。と、首筋に触れる、温かな熱。ちょうど、リエーフの付けた痕のあたり。
『ひゃ、な、なに』
「上書きです、今はこれだけにします」
離れる温度。
「安心してください、
軽くキスしただけです」
つん、とさっきまで唇を触れていたであろう場所をつつく。
「じゃあ、俺はこれで
あと、腹ペコの烏にも気を付けてね」
へなへなという言葉がぴったりなようにその場にぺしょりと座り込む。目眩なんてものはすっかりどこかへ行っていて、ただ、触れた温度がずっとまとわりついて離れなくて。
合宿の、あと半分。わたしは生きているだろうか。