第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
合宿も折り返しの4日目。
昨日までに比べてやや気温も落ち着き、例年通りの過ごしやすい森然高校がやっと来る。鎮痛剤のおかげでいつも通り動けるわたしは、昨日のポンコツを忘れるかのように走り回った。
業務連絡、ドリンク作り、試合の記録、ミーティングでの情報提供、体調確認、ドリンク作り、記録、連絡、エトセトラエトセトラ。
朝から頑張りすぎたせいで、お昼にはちょっと疲れちゃって、お昼休憩に食堂でぐだぐだいつもの倍の時間をかけて食べる。
「悠里センパイお肉いらないなら欲しいス」
『リエーフは育ち盛りだねぇ、お食べ』
ただでさえ大盛りの器に、メインのお肉を更に乗せてやる。ありがとうございますっと目を輝かせ、隣の日向くんとどっちが沢山早く食べられるか競争を再開させるリエーフ。
目の前に座る京治と月島くんは、普通盛り、というか月島くんの少なくない、女子マネージャーと同じ量ぐらいなんだけど。
『月島くん、さすがにそれは少ないかと』
「僕は胃袋ブラックホールじゃないんで」
『京治も、頭も体も使うんだし、
もっと食べていいと思うんだけどなぁ』
わたしも人のこと言えない量だけど、と豚汁をすする。食べ終わったリエーフと日向くんが走り去るのを見届けて、そう言えばと京治が口を開く。
「昨日、大丈夫でしたか、
なんか黒尾さんが姫抱きにしたって
うちの後輩すごい騒いでたんですけど」
「僕も日向に聞きましたよ、
灰羽と黒尾さんバチッてたって」
『あ、あぁ、あれね…』
食堂に他に人がいないのを確認してから、事の顛末を小声で伝える。
「それは、大変でしたね…」
「僕はそんなキザなことはできないなぁ」
『逆にあの場にいたのが黒尾で良かったかも』
そう苦笑いして、食器を下げて3人分をまとめて洗う。京治と月島くんは、何も言わなくても前みたいに片付けを手伝ってくれた。
体育館へと戻る道すがら、軽くめまいがして隣にいた京治の肩を咄嗟に掴む。貧血かもしれない。
「貧血ですかね、
お姫様抱っこ、しましょうか?」
『京治、冗談やめてよ、
ごめんちょっとだけ肩貸して』
「肩じゃなくて、こっちどうぞ」
ぐん、と腕を引かれる。ふわり、香る、制汗剤。