第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
音駒が借りている部屋を覗けば、ほぼ全員揃っている。わたしが来たのに気付いたのか、リエーフはぷいと背中を向ける。チクリ、と胸が痛んだ。
『昼間は離れちゃってごめんね、
ドラスト行くんだけど、
誰か買いたいものある人いる?』
ドアから顔を出して訊けば、何かいるっけ、と相談を始めるみんな。ウェダーインゼリーと、スポドリの粉と、あれもこれもと数えているうちにけっこうな量になりそう。
『どうしよう、誰かついてきてもらっても...』
「じゃあリエーフと俺で行くわ」
黒尾の発言に、ぎょっとして振り向くリエーフ。俺そんなこと言ってないっスと不服そうなその腕を引っ張り、行くぞと無理やり立たせる黒尾。
歩いて15分程の道のり、田んぼからはゲコゲコと雨蛙の大合唱。蒸し暑い空気が首筋に汗を浮き上がらせる。
「柏木、体調どう」
静寂を破ったのは、黒尾。
『うん、だいぶいい』
「俺も焦ってごめんな」
そうは見えなかったし助かったよ、と伝えると、後ろを歩いていたリエーフが口を開いた。
「なんなんスか、俺に見せつけるために
わざわざ連れ出したんですか」
『違う、そんなんじゃない...』
「お前、彼氏ならちょっとは考えろよ」
語気の強い黒尾に、リエーフが顔をしかめる。
『いいよ黒尾、悪いのわたしだから』
「良くねぇだろ、一番しんどかったのお前だろ」
「早くも彼氏ヅラですか、クロさん」
フンと鼻を鳴らすリエーフ。その目にいつもの優しさはなくて、それがすごく、悲しくて。
「じゃあ柏木は、あの場で言えばよかったのか、
生理がいきなり来て血がついちゃったって、
あんなに他校生もいる場所で、っ!」
言えばよかったのかよ!?
ぐん、と黒尾がリエーフの胸ぐらを掴む。リエーフの方が黒尾より大きいのに、まるでそうは見えない、気迫。
「せ、いり」
『黒尾、もう大丈夫だよ、
リエーフだって悪気なかったんだし』
わたしだってリエーフが女の子横抱きにしてたら嫌だし嫉妬するから、と俯きがちに言う。
「すみま、せん、でした......」
『うん、わたしもごめんね』