第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
合宿3日目。
昨日と同じくして猛暑がわたしたちに襲いかかる。ペナルティの変更や、午後の試合時間の遅延をし、過度な負担がかからないようにという運びになった。
試合に出ていないプレイヤーも熱中症には気を付けるようにと連絡が周り、いつも以上に状態確認に気を使う。そう言えば、リエーフの歯型はともかく、キスマークが目立つので、ファンデーションとコンシーラーで何とか肌色に近付けて隠した。
午後になり、なんとなく体調が悪くなってきた。熱中症だろうか、いやでもお腹が痛いんだよなと思い、体育館の壁に背を預けて足を投げ出して座り、目を閉じる。
そよ、と生ぬるい風が髪を撫でる。今日も暑いな。
「おい、柏木、お前平気か?」
は、と思って目を開ければ、そこには心配そうに顔を覗き込んでくる黒尾の姿。
『ん、平気...』
「それ平気って顔じゃねぇけど」
あちぃーと言いながら隣に腰を下ろす黒尾。
伸ばしていた足を抱え、体育座りをする。あぁ、なんかお腹痛いの強くなってきた。不定期だから存在忘れてたけど、生理ちゃん前に来たのいつだっけな、そろそろ婦人科行きなってお母さんにも言われてたのに。
ぐりぐりと、下腹部を押されるような痛みが唐突に強くなる。痛い、しんどい、辛い。
『うぅー』
「なぁ柏木、それ、」
もしかして生理、と耳打ちする黒尾。その視線の先には、床を擦ったような赤色。
『えっ、やだ、待って、は、さい、あく...』
思わず膝立ちになって見れば、短パンからじわりと臀部に滲む赤。どうしよう、こんな人もいる体育館で真昼間に、最悪。予備のナプキンは宿舎の方だ、手元にはない。しかも黒尾に見られた。無理、死にたい。
「ちょっと待ってろ」
そう言うと、黒尾はボール籠にかけてあった自分のジャージを持ってきて、膝立ちするわたしのおしりを覆うようにして腰に巻く。
「嫌だろうけど、我慢な」
『なにが、ひゃあ!』
黒尾が近付いたかと思うと、ぐんと高くなる視界。
静かなどよめきと注視する視線で、お姫様抱っこをされているのだと初めて認識した。