第1章 高 校 卒 業
『悲しいから春休み毎日でも部活来てやる...』
ズッと鼻をすすると、それはさすがに無理だねと海が冷静に突っ込む。でもそれぐらい、居場所で、大好きだった。
『大学生になっても、3人とは仲良しだし、
定期的に会ってくれないと寂死ぬからね』
「んな、大袈裟な...柏木はウサギですか?」
「まぁでも、集まりたいよな〜
でも黒尾と柏木は同じ大学だろ?」
『誠にザンネンながら』
それはご愁傷様です、恐縮です、なんて夜久とお辞儀をしあっていると、後ろからドタドタと走ってくる足音。
「悠里センパイっ!」
『灰羽、え、部活は?』
「ちょっとだけ、抜けて、来ました...」
息を整えながら話す灰羽。3人に駅前のマックかサイゼで待っててと伝え、段差に腰かけるように促す。隣に座って思う、やっぱデカイな。
『どしたん、さっきバイバイしたのに』
「言い忘れたことあって」
目尻がキュと吊り上がった、猫のようなエメラルドグリーンが私を捉える。あ、これ知ってるやつだ、と咄嗟に思う。
「俺、悠里センパイのこと、好きです
入部してからずっと、好きです」
『は、灰羽...』
「大学生になったら、会えなくなると思って」
だから今日言うことにしたんスけどね、と灰羽言う。
灰羽は人懐こいし、距離の縮め方も上手いから、1年の中では多分一番仲も良かった。自然と注目を集めてしまうような、そんなところもあると思う。何よりロシア譲りの高身長に綺麗な髪色と瞳、ビジュは申し分ない。彼氏になったら、多分色んなことをして楽しませてくれるだろう。
けど。
『ごめん、灰羽
わたし、そういう風に灰羽のこと考えたことなくて...』
「じゃあこれから考えてください」
中途半端な断り方をすると、ズイと身を寄せてくる灰羽。ふわと香る、汗と柔軟剤。
「俺、悠里センパイが俺のこと
好きになってくれるまで待ちます、待てます」
『でも、別にこれきり会えないわけじゃないし...』
「いーやーでーす!だって!」
センパイ可愛いから大学行ったらすぐ彼氏出来そうで、と背中を丸める灰羽。