第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
頭が追い付かない、現状を整理しよう。
ここは第3体育館の横、わたしとリエーフ2人だけ、リエーフはわたしの両肩を壁に押し付けている、それから顔が怖い。
『り、リエーフ、?』
「怯えてる悠里も可愛いね」
どういうこと、と口を開こうとして、けれどもそれは音にならなかった。噛み付くように、キスされる。
『ん、んん──ッ!?』
いつものリエーフからは考えられない荒々しさ、気持ちは全然追い付いてくれないのに、身体だけは馬鹿みたいに正直に反応して、肩が跳ね、腰が疼きだす。
こんなのはやめて欲しくて、肩を押してみるけど、鍛えた体はビクともしない。酸素を求めて肩をどんどんと叩けば、ようやく離れるリエーフ。
「中、練習してる人いるんで、
あんまり声出したら気付かれますよ?」
だから声抑えてくださいね、と低く言うと、再び唇を重ねられる。肩を押さえつけていた手は顎に添えられ、横を向くことも許されない。ただ、与えられるそれに応えるだけで精いっぱいだ。
唇をついばんで、それから拒む隙もなく口の中に舌が侵入してきて好き放題にする。怖くなって、奥に引っ込むわたしの舌を、リエーフの長い舌が器用に絡めとって、それをカプカプと甘噛みされる。
『り、んんっ、りえ、も…っ、や』
「まだ、足りません」
やっとの事で声を出すも、半分ぐらいは嬌声で、それすら足りないというリエーフに却下されて、キスは続く。ようやく解放された頃には、酸欠なのかキスの快感なのかでくらくらして、足に力が入らなくて、リエーフにしなだれ掛かるようになる。
「あ、まだ足りなかった」
『なに、が───っ、ちょ、いっ』
ジャージのファスナーを下ろし、Tシャツの襟ぐりを強引に開き、剥き出しになった肩にがぶりとかぶりつく。文字通り、捕食行為みたいなそれは、めちゃくちゃ痛い。
『ば、か、イッタい、あ、痛、いてば』
「あとこっちも」
そう言って反対、左側に顔を寄せるリエーフ。また噛まれるのは、痛いから嫌だと思ったら、今度はちうっと座れる甘い痺れ。
できた、と体育館から漏れ出す明かりに照らされて嗤うそれは、少し怖くて、でも恐ろしいぐらい綺麗だった。