第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
着ていたTシャツを絞るリエーフ。なんとも言えない顔をしていたので、どうしたのと声を掛ける。
「俺のジャージ着てる悠里センパイは
めちゃくちゃ可愛いんですけど…」
『うん、?』
「俺も見た事ないのに緑のブラ、
みんなに見られたのまじ悔しいス!」
『あんたちょっと黙んなさい!』
全力で悔しそうに嘆くリエーフの背中を容赦なく叩く。思い出しちゃったらしい何名かが挙動不審になった。ミ、ミミミミドミドリとロボットみたいな影山くんに、緑ってなんだっけみどり緑ミドリとゲシュタルト崩壊する日向くん。ほら、言わんこっちゃない。
不服そうなリエーフと並んでメインの体育館にある音駒の荷物置き場に向かうと、黒尾と孤爪がホワイトボードを使って話しているところだった。
「柏木、またなんで今度はリエーフの…」
『今日も水かぶったんです!もう!』
「可哀想…」
えーんと泣き真似をしながら孤爪の隣に座る、何してんのと聞けば1年生に教える新しいサインと、パターンの考案らしい。
それを一緒に考えていると、京治が第3体育館でまた練習すると呼びに来たので、孤爪にちゃんと食べてゆっくり休むように念押ししてからリエーフと向かう。黒尾は今日は孤爪と一緒にいるらしい、過保護め。
「悠里センパイ、」
渡り廊下、人気のないところでリエーフが立ち止まる。
「今日‘も’水かぶったって、
昨日もあったってことスか?」
『あ、』
先程の会話を思い出し、自爆したことを悟る。かくかくしかじかで京治にジャージを借りたから他に誰にも見られてないことを伝えれば、更に険しい顔になるリエーフ。
「だから昨日の自主練の時着替えてたんだ、
てか俺の着る前に、赤葦さんの着たんだ」
『いや、だからそれは仕方ないって言うか』
「他の男に見せたんスね、下着」
『事故だったんだってば』
もういいから、と強引に腕を引かれ、建物の壁に押し付けられる。体育館の中では、日向くんや月島くん、京治の練習しているらしい音がする。
「言っても分かんないなら、
センパイにも分かるようにするんで」
そう言うリエーフは、捕食者の目をしていた。