第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
ものすごい剣幕の京治にガタガタと震える2人、おろおろする芝山からバスタオルを借り、まぁまぁと京治をなだめる。
『わたしら昨日から水難の相出てるから、
逆にこのくらいでラッキー、みたいな?』
拭けば乾くしと言いながらびしょ濡れになった頭をタオルで絞っていく。そして残念ながら、今日も白のTシャツだ。だってこんな、浴びると思わないからね。
気付いたらしい影山くんが、カカカカカシカシワギサンと言いながら真っ赤になる。他のみんなもどうやらそれが何を意味するか分かったようで、各々取り乱す。
拭く前にわたしに座るように言ってくれた京治に従い、体育座りをする。髪を拭いていたタオルを肩から羽織るようにしてとりあえず前を隠し、リエーフの名前を呼ぶ。
「ハイッ」
『ジャージ、取ってこれる?』
「今すぐお持ちします!」
言わんとすることを珍しく察したリエーフが、ダッシュで宿舎に向かう。水を止め、片付けをし、大人しく目の前に正座して整列したみんなに、京治が良いですか、と口を開いた。
良いですか、田中、西谷、山本、犬岡、影山、日向。俺は別にこういうことするなとは言いませんし、夏だから暑いですし、熱中症予防のためにも正しい行動です。ただそれは自分たちで完結した場合の話ですからね、こうやって柏木さんや俺に水をぶっかけるのは部外者を巻き込んでいるっていう気持ちになってください、おかげで柏木さんはしなくてもいい思いをしたんです、それから...
と、止まらない。マシンガン説教が止まらない。しかも全部正論だから誰も何も言えない、だんだんみんなの顔から生気が失われていく。
「悠里センパイっ、とりあえず、
体育館にあった、俺の、ジャージを...」
『ありがとうリエーフ』
「灰羽も、そこで聞いてね」
「ウス」
シャキッと背筋が伸びるリエーフ。さすが梟谷の司令塔、抜け目ない。ぶかぶかの赤いジャージに手を通し、チャックを閉める。なんか昨日もこんなことした、デジャビュすぎる。
一通りお説教が終わった後、魂の抜けそうになってるみんなにタオルを渡すと、西谷くんと日向くんは天使様ごめんなさいと泣き出した。恐るべし、赤葦京治。