第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
貸し出しのバスタオルとフェイスタオルを数枚ずつ持ってくれば、まぁ、想像通りというか。もらいます、と手を差し出す手白にタオルを渡し、改めて目の前の惨状を見詰める。
「日向ーっそれ!」
「わっ、リエーフやったなぁ!」
「オラオラオラオラオラァ!」
こうなりますよね、って感じの濡れ具合。もう裸足で、なんなら上裸で、全身で水浴びしている姿は、さながら真夏の子供向けプール。思わずスマホをポケットから取り出し、数回シャッターをきる。
烏野セッターの影山くんがいるのはビックリだけど、まぁ楽しそうだからいいか。あとで仁花ちゃんにも送ってあげよう。芝山、手白と生暖かい目で見守っていると、何してるんですかと京治。
『あぁなんか、涼みたいらしくて』
「猫と烏の行水、ですね」
あえて手を離し、蛇のように動くホースから逃げる遊びをしている子供たちを見ながら京治は静かに言った。もうみんなこれくらいの精神年齢になってほしい。
って言うか、去年これがなくて良かった、木兎と黒尾いたらもっと酷いことになってそう。蒸散の効果か、実際に水を浴びていなくてもこの辺りだけ少し空気が涼しい気がする。ただ、ばしゃばしゃと跳ねる水が足元にも飛び散ってるから、もうちょっと下がるか。
そう思った瞬間。
スローモーションで見えたのは、日向くんに水を掛ようとする烏野リベロの西谷くん、そんでそれを横っ飛びで避けた日向くん。ホースからとめどなく溢れる水は、放物線を描いて綺麗に飛んできて。
『へぶっ!』
「うわ、っ」
「「うわああああああぁぁぁぁぁああああ」」
手に抱えていたタオル諸共水浸しになった。逃げ遅れた隣の京治も道連れにして。ぽたぽたぽたと滴る水滴が足元に水溜まりを作っていく。さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返り、ただセミの声だけが響く。
顔面蒼白の日向くんと西谷くん、2人が何か言うより前に隣の京治が口を開く。
「あの…」
「「ヒィッ」」
「楽しむのはいいですけど、
限度ってモノが、ありますよね?」
「「スミマセンデシタアアアァァァアァア!」」
赤葦京治、17歳。恐怖の貫禄。