第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
『落ち着いた、孤爪?』
「うん、ありがとう、迷惑かけてごめん」
『こんなの迷惑にならないから』
気にしないでと笑うと、ちょうど黒尾がおにぎりと汁物を2人分持ってきてくれた。わたしも隣で食うんだろうと思ったらしく、その場にいた仁花ちゃんに頼んで用意してもらったらしい。後でお礼言わないと。
『食欲湧かないかもしれないけど、
おにぎりとお味噌汁だけ頑張ろう?』
「悠里が言うなら、分かった」
いい子だねと頭を撫でると、子供扱いしないでよと拗ねたように言う。ぬるくなった冷えピタをおでこから剥がし、代わりに濡らしたわたしのハンカチを頭に乗せてあげる。
『こうするとちょっと涼しいんだよ』
「ほんとだ、ありがとう」
どういたしましてと言いながらおにぎりを頬張る。程よい塩気に体が待ってましたとばかりに喜んでいるのが分かる。自分の体が欲しているものを‘美味しい’と感じるのだから、人体っていうのは本当によくできているものだ。
2人で並んで食べ終わったところ、食堂からの帰り道らしいリエーフがばたばたと走ってくる。
「研磨さん熱中症大丈夫スか!?」
「うん、悠里のお陰で...」
『リエーフも熱中症気を付けなさいよ』
「わかってます、
みんなにも言ってきます!」
熱中症に気をつけろってーと叫びながら体育館へ戻るリエーフ。それを見送ると、孤爪がこてんと頭を肩にもたれてくる。素っ気ない野良猫に懐かれるぐらい、珍しい現象。
『よしよし孤爪、まだしんどい?』
「ちょっとバレーは無理...」
『じゃあ猫又監督に言ってくるから、
孤爪はここで待っててもらえる?』
「ヤダ......悠里は行かないで...」
ぎゅ、とTシャツの裾を握る孤爪。
えぇ、何この生き物ちょー可愛いんですけど。
こんなに孤爪が弱ってるの初めてじゃない、初めてなんだけど。春高の烏野戦の後ですらこんなんじゃなかったけど、何も甘えてこなかったけど。
可愛さに悶えながら黒尾を手招きし、一旦孤爪お休みで、手白にセッターを任せるように伝えてもらった。