第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
2日目、午前9時の時点で室温30℃オーバー。直射日光の当たる屋外はもっと酷く、試合に負けた時のペナルティは裏山ダッシュからフライング一周に変更になった。
昨日と同じペースでドリンクを作っても追い付かず、毎試合後に冷水を継ぎ足す。それでもすぐに空になるし、なんなら爆速でぬるくなってしまう。いつもよりみんなに強く水分補給と塩分補給を促すが、ちらほら怪しい人が出てきた。
「い゛......ッ!」
『孤爪!?』
午前最後の試合後、この段階でバテバテで普段より動いていないはずの孤爪が足をつった。ついでに身体に力が入りにくいらしい。軽度の熱中症だろう。
黒尾に頼み、渡り廊下の方が涼しいからと孤爪を運んでもらう。中よりはまだ少しは風も通るし、ここで休ませよう。
『スポドリ、ゆっくりでいいから飲んで
この氷、両腋の下に挟んで、冷えピタも』
ノロノロと動きスポドリを飲み、あづいと声を漏らす孤爪のおでこに冷えピタをペチりと貼る。ごめんと断りを入れて首に触れる、しっかり熱い。色の白いほっぺたも火照ってしんどそうだし、これで様子を見て、悪くなるようだったら病院へ行こう。
黒尾に孤爪を任せ、各校のマネちゃんを緊急招集する。いつもと様子がおかしい人、めまいふらつき・筋肉痛・足をつる・だるさのある人はすぐ休ませること、いつもより意識的に水分補給させること、やばいと思ったらとにかく人を呼ぶこと、などなど。
『うちらマネージャーも動いてないとはいえ、
同じ環境にいるんだから気をつけていこうね』
はいっとお行儀のいいお返事、それから主将にも伝えるように頼んだ。また、練習も暑さがいちばん厳しい時間帯を避け、午後の開始は昨日より30分ほど遅らせることになった。
一通りやることを済ませ、孤爪のところに戻ると、先程より幾分か顔色も呼吸もマシになっている。
『黒尾助かったわ、お昼食べてきな
あと孤爪におにぎりと汁物欲しいかも』
「おう、持ってくるわ」
お願いね、と黒尾に言い、それから水道で濡らした手で孤爪の首元に触れる。悠里の手つめたくて気持ちいと顔を擦り寄せる姿は、さながら猫のようだった。