第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
やっとの思いで着替え──同じことは無いと思うけど、万が一に備えて黒いTシャツにした──、急いで第3体育館に向かえば、悠里センパイおそーいとリエーフが口を尖らせた。
『ごめんごめん、ちょっと着替えてて』
「音駒の黒Tシャツが
悠里センパイには一番似合うっ!」
がばっと長い手を伸ばして抱きすくめるリエーフ。お願い、暑いから、頼むからやめて。もはや合宿校の中では公認カップルすぎて、冷やかしが気になると言うより、ただただ暑い。
べりっと引き剥がし、審判台によじ登ると首に下げた自前のホイッスルを手に構える。黒尾は得点板係で、烏野 vs 猫・梟のチームに2人ずつで分かれた。
簡単な審判をやりながら、日向くんはレシーブが随分上手くなったなぁと思う。改めて見ると、ブロックに合わせたポジション取りや、咄嗟の反射能力が素晴らしい。元々運動神経がいいからなんだろうな。
月島くんのトスに合わせて、日向くんがスパイクを決める。
『リエーフ、今の拾える球だよ!』
「ハイっす!」
ネットを挟んだ反対側、1年間みっちり夜久がしごいてくれて、その後も‘守りの音駒’なだけあって、レシーブ練習にかなり力を入れていた。そのかいあって、リエーフもかなり上達している。
それに2対2なら、とにかくボールさえ上がればが京治がセットしてくれるし、リエーフの打点の高さからのスパイクなら月島くんでも完璧には止められない。
10-12で猫・梟チームがリードしているところで、晩ご飯もあるので今日はお開きとなった。
「ところで柏木さんや、」
日向くんとリエーフがメシメシと叫びながら走り去り、置き去りにされたリエーフのタオルとサポーターを回収していると、黒尾がニヤニヤしながら話しかけてくる。
『いや、そういうの間に合ってます』
「何がだよ」
『え、宗教勧誘ですよね...?』
「ちげぇし!」
それから勝手に、第3体育館に柏木が来た時から既に俺は気付いていた、と黒尾は続ける。
「お前は服着替えてるし、
赤葦もなんか濡れてるし2人でナニしてたんだよ」
『よし京治、月島くん、行こうか』
「そうですね」
「黒尾さんサヨナラー」
「無視すんな!」