第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
合宿初日から記録的な暑さで、夕方になっても気温は下がらず、体育館内の室温計は31℃を差している。
『暑っついから、水分補給してね
あと塩分チャージタブレットも!』
「「「うぃーっす!!!」」」
あといくつかで今日の試合は全部終わるが、それより前にぶっ倒れては元も子もないので、熱中症の注意喚起をする。スマホを開いて明日からの天気予報を見れば、連日30℃越え、中には35℃の猛暑日になりそうな日もある。
明日にでも監督たちにも聞いて、OKが出たら各校に熱中症にならないようにいつもより気を付けてもらうように伝えよう。
最後の試合後、烏野がペナルティの裏山ダッシュを終え、自主練や食事、入浴の時間となる。
「悠里センパイッ、試合の
審判やってもらっていいスか!」
『第3体育館だよね、ボトル洗ってから
行くから先に準備してもらっていい?』
了解であります、と敬礼するリエーフは、日向くんに声をかけ競うようにしてメインの体育館から走り出す。その背中を、どんだけ元気あるんだよ、と言いながら月島くんも追い掛ける。
それを見送ってから、ボトル籠を抱えて水道へ向かう。
ようやく陽も落ちかけ、渡り廊下では生ぬるい風が肌を撫でる。蛇口をひねると冷たい水が気持ちいい。明日は昼休みに水ぶっかけてもいいな、きっとすぐ乾くし、体温も少しは下がるだろう。
それにしても、
『...はぁ、あっついなぁ......』
昼間はセミの大合唱だったが、今度は雨蛙がゲコゲコと近くの水場で鳴いているのが聞こえる。さすが森然、虫だけじゃなくて蛙まで元気とは。
ボトルの中身は空に、洗剤で綺麗に洗い終わり、キャップとボトルをそれぞれ水を切ったところで、人の足音。振り返れば、宿舎の方から歩いてくる、梟谷色のジャージ。
「柏木さん」
『ん、京治おつかれ』
「お疲れ様です」
まだ暑さ残ってますね、と続けて言いながら水道の水を飲む。なんか見てたらわたしも喉乾いちゃったな。キュ、とひっくり返した蛇口をひねれば思ったより回しすぎたらしく、水がばっしゃんと飛び出してくる。