第6章 夏 休 み 合 宿 前 半 戦(♡)
現役のみんなは午前中には到着していたらしく、わたしたちが正午頃に着いた頃には、昼休みのようだった。
外履きからシューズに履き替え、監督陣に挨拶をして回る。猫又監督によろしく頼むねと肩を叩かれ、黒尾は満更でも無さそうだ。前回と違い、今回の黒尾はサポートメイン、ブロックやレシーブ強化のための指導に回る。わたしはいつも通り。
埼玉は森然高校、さすがにあのコンクリートジャングルトウキョウよりは涼しいとは言え、夏本番を迎えた暑さは底知れない。相変わらずここはセミが賑やかだ。
そして賑やかなのは、何もセミだけでなく。
「悠里センパ───イッ!
おっはようございます今日も可愛い!」
体育館に足を踏み入れるなり、暑苦しいのが飛んでくる。
『見慣れた音駒ジャージですけども、
リエーフおはよう、今日も元気だね』
「顔見たんで元気100万倍っス!」
ほらほらと両足でびょんびょん跳んでみせるリエーフ、足もかなり調子が良さそう。捻挫は一度やると繰り返しやすいから、予防のためのサポーターは着けているけど、しっかり足の裏全体で着地できているのが分かる。
何にせよ、また元気にバレーができるようになってよかった。飛んだり跳ねたり走ったりが禁止されている時のリエーフは、それはもう、抜け殻のようだった。
「柏木さん、おはようございます」
『あ、京治もおはよう!』
今日も暑いですねと言う京治、さすがに背はもう伸びてなさそうだけど、なんだかオーラが違う。インターハイを終え、春高を目指すということで、やはり貫禄が出てきた気がする。
うちの孤爪はと言えば、相変わらず猫背で細くて、まるでバレーボーラーって感じがしない。それでも、不器用なりに頑張っているのであろう、後輩にも慕われているようで安心だ。福永と山本もいるし、大丈夫だろう。
『音駒にサポート入ります、柏木です』
改めてよろしくと、試合に向けて動き出すみんなに頭を下げる。体育会系特有の元気な挨拶が歓迎してくれる。試合まであと15分、それまでに午前中に減ったドリンクを補給してこよう。わたしはボトルの籠を抱え、水道へと向かった。
1週間の合宿が、幕を開ける。