第1章 高 校 卒 業
電話の主は孤爪だったようで、卒業記念に写真撮影をするから集まって欲しい、とのこと。わたしたちは体育館へと移動した。体育館へ入ると半面には女バレがいて、もう半面に男バレの皆がネットを貼って部活の用意を進めている。
「どうもー、呼ばれました3年生でーす」
なんて、黒尾が茶化す。それからすぐに写真撮影だからとネット前へ。3年生が綺麗めのボールをそれぞれ持ち前列に、後列に部活ジャージを着た1,2年生が並ぶ、という構図になった。
コーチと監督には両サイドに立ってもらい、クラス写真同様にピースをしたりガッツポーズをしたり、何枚か女バレの子に撮ってもらった。わたしを含めても10人しかいない男子バレー部、卒業したら6人で控え選手が居なくなってしまう。来年こそたくさん部員が入って欲しいものだ。
写真撮影が終わって、喋るだけ喋ってそろそろお開きという雰囲気になったとき、黒尾から合図が飛んだ。こくりと頷くと、わたしは体育館脇へ置いたリュックサックに走り、中から綺麗に梱包された袋を2つ取り出した。
集合、と黒尾から声がかかり、卒業生4人で監督とコーチの前へ整列する。
「猫又監督、直井コーチ、3年間お世話になりました。俺たちからの感謝の気持ちです。ありがとうございましたッ!」
「「『ありがとうございました!!!』」」
部長の黒尾、そして海の2人がそれぞれ監督とコーチへ包みを渡す。毎年楽しみなんだよなぁと嬉しそうな監督、中を開けるとコーチとお揃いで色違いのお酒を飲むグラス。
『それ、お酒を入れると逆さ富士が見えるんですよ』
早速今晩使ってみようと嬉しそうな2人に、黒尾達と顔を見合わせてほっとする。ちなみに中にはちょっとお高いおつまみセットとかも入っているので、晩酌にはぴったりのはず。
喜んでもらえてよかったね〜なんて笑っていると、今度はわたしたちの前に後輩たちがずらりと並ぶ。
「3年生の皆さんにはお世話になりましたッ、俺たちからの感謝の気持ちです!受け取ってください!!」
そう叫ぶのは山本で、色紙をわたしたちに手渡す。春高の時に撮った写真を真ん中にして、左上には「音駒高校男子バレー部」の文字。右下にはそれぞれの背番号と名前入りのユニフォームのイラスト。わたしのには0番と描いてあり、それが嬉しくて視界が滲んだ。