【SPY×FAMILY】dear twilight ※全年齢
第2章 しろいがようし
ふわりと微笑むユノは、
アーニャの落とした本を拾って言った。
「はい、ロイド様に言われたでしょ。ちゃんと読もう」
「うう、ばれていた」
「一緒に読もうか」
「いいの?はは だいすき」
「うん、わたしも大好き」
ユノは連れてきたころに比べ、
だいぶ雰囲気が柔らかくなった。
アーニャが天真爛漫なこともあり、
朗らかに笑っていることも増えた。
ロイドは目を細め、ふたりを見守る。
「フォージャー様。お会計はこちらでございます」
「はい、」
キャッシュトレイに置かれている伝票に手を伸ばした。
「…………」
余所行きの子供服と、女性のスーツ一式。
思いのほか、高額であった。
ロイドは小さくため息をつき、財布を取り出す。
「カードで」
店員がカードを乗せたトレイを持ち一礼して、奥に下がる。
アーニャがひとりになったロイドに声を掛けた。
「ちち、ははのようふく、このまえのじゃだめなのか」
「この前のは、ぶかぶかすぎて見苦しい。きちんとした格好で行かないとならないからな」
「かりものですますなんて、やすいおんなにみられたもんだな」
「………アーニャ、夜のドラマを録画して見るなと言ったはずだ」
はっ、
「…………」
目を大きく見開き、
視線を泳がせるアーニャ。
「ちがう。ははがみてたのきいた」
「え?そうだったかな。すみません、ロイド様」
絶対に、違う。
だが、
こんなことで問い詰めるのも馬鹿馬鹿しい。
口を尖らせ上を向いているアーニャを一瞥して、
ロイドは言った。
「………まあいいよ。ユノ、いい加減に様をつけるの止めようか」
「あ、申し訳、ありません………」
「家族なんだから。ごめん、でいいんだ」
「ごめん、なさい、………ロイド」
「そう、」
ロイドはふ、と笑い、ユノの頭を撫でる。
アーニャは横で変な顔をしていた。
ゲフ、
「むねやけするな」
「? 具合悪いの?大丈夫?」
ユノが慌てて、屈んでアーニャの額に手を当てる。
「ははがさわると、なおった!」
「ほんとう?よかった、………」
優しくなでる手を、小さい手でそっと触れる。
流れ込んでくる声はアーニャを気遣う内容ばかり。
アーニャはユノに、目一杯の笑顔を向けた。