【SPY×FAMILY】dear twilight ※全年齢
第2章 しろいがようし
某日。
試着室のカーテンが開いた。
身長の160cmより少し高い、細身の女性。
淡いベージュのスーツに身をつつみ、
首元には顔色が良く見える、
薄い桃色のスカーフが巻かれている。
顔を下に向けると、
真っ直ぐな黒髪が、肩からサラリと落ちた。
大きな丸い、猫のような瞳を伏せ、
ぎこちなく床に置かれたヒールに足を入れ、
彼女は視線を上げた。
「ロイド様。どうでしょうか」
「……………………」
ロイドはしばし言葉を発することなく、
ユノを見つめていた。
店員に声を掛けられ、
黙り込んでいたことに気付き返事をする。
「とても、お似合いですよ。ご主人も、そう思われますよね?」
「そう、だね。うん。とても似合ってる」
数枚、適当に見繕って渡した
普段着ではわからなかった、
くびれた腰と、
スカートの裾から細い足が伸びている。
どこからどう見ても、
品のいいお嬢様といった感じだ。
ユノの充分過ぎる外見に満足し、
ロイドは店員に声を掛けた。
「この色のスーツだと、僕は濃色よりもグレーのような淡色のスーツにした方がいいだろうか」
「そうですね。同じ色のお召し物を用意する必要はございませんが、ご夫婦で纏う近しい雰囲気は大事かと」
「なるほど。では 僕はネクタイを新調するとしよう。これに近い色のスーツを持っているから、――――――」
ロイドが店員と話しながら
選んでいる横では。
ユノが初めて履いたヒールのために、
手を拡げ、バランスを取るように
よちよち歩きをしていた。
「う、うう、………」
「はは、あひるのまね!アーニャも!!」
「アーニャさん、そうじゃない、………」
アーニャはボックス型のソファに腰掛けて、
言われた通り本を読んでいた。
逆さまに持っていた本が、
手から離れ、
クッションマットの上に勢いよく落とされた。
ユノの真似をしたいのだろう。
手を広げ、口をしゃくれさせて、歩いている。
「はは、おされ!これでいっしょにがっこ、いく?」
「うん、そうみたい」