第3章 未知との出会い、騒音との再会
さてさて私の立場としては、いくら炎柱様が自ら引き下がってくれたとは言え、お礼、もしくは謝罪の言葉のひとつやふた述べるべき立場である。
私は、ほとんど天元さんのほうに向けていた身体の向きを、炎柱様の方に変え
「お誘いいただいたのにも関わらず、ご連絡が出来ず申し訳ございませんでした。思わぬ天元さ…音柱様からのお誘いに、すっかり炎柱様にお誘いいただいておりましたことを失念してしまいました。申し訳ございません」
そう謝辞を述べ、頭を下げた。(”その地味な呼び方は止めろ”と炎柱様の隣で言っている天元さんは無視しておこう。)そんな私に炎柱様は
「頭を下げる必要はない!君にとって、俺の元に来るより、宇随の元に行くことの方が適切だ!良い師に巡り会うことは力をつけるために最も重要な事柄のひとつ。頑張るといい!」
相変わらず声は不必要に大きくはあるが、その寛容な炎柱様の言葉に
…やっぱり…私が思っているより…嫌な人じゃないのかも…
そんな考えが頭をよぎった。
けれども、天元さんの
「煉獄。実はそいつ、独自の面白い呼吸を使うんだぜ?」
という余計な一言で(絶対に面白がって言ったに決まっている)、
「何!?独自の面白い呼吸!?それは何だ?どういった呼吸なんだ!?」
そう言いながらずんずんと私の方に近づいてくる炎柱様の勢いに
「…っ!?」
思わず一歩後ずさる。
目力が…!圧力が…っ怖いからぁ!
どんどん大きくなってくる炎柱様の姿の向こう側に、懸命に笑いを堪えている天元さんの姿が見え、
余計な事を言うから…っ笑ってないで…助けてよぉ!!!
そんな事を思っている一瞬の間に、炎柱様は私の目の前まで来ており、
ズイッ
と私に顔を近づけ、私の目をじっとその猛禽類のような目で覗き込み
「是非とも俺に見せて欲しい!」
そう半ば叫ぶように言った。
近い。
うるさい。
怖い。
無理無理無理。やっぱり苦手!!!