第3章 未知との出会い、騒音との再会
"準備するからちょいと待っててねぇ"
そう言われ、私は音柱邸に戻ってから訪れる、雛鶴さん、まきをさん、須磨さんとの楽しいお茶の時間に思いを馳せながら、もくもくと上がっている蒸気の様子を見て楽しんでいた。
既に朝日が昇っている。
柱である天元さんがそばにいる。
美味しいお饅頭をもうすぐ3人と一緒に食べられる。
それらの要因が私の警戒心を完全に緩ませていた。
美味しいお饅頭を食べながら雛鶴さんまきをさん須磨さんとお喋り…楽しみすぎる!
そんな事を考えていると、
「宇髄!よもやこんなところで会うとは!」
「煉獄じゃん。何?お前も饅頭買いに来たの?」
突如聞こえてきてしまった、忘れたくても忘れられない喧しい声に、
「うむ!ここの饅頭は美味いからな!弟に土産だ!」
「へぇ。舌の肥えたお前がそう言うって事は相当美味いってことか」
私の身体はピシリと石のように固まった。
「それにしても、宇髄が饅頭を買っているとはなにやら物珍しい光景だな」
その炎柱様の言葉に、
お願いだから余計な事を言わないで…
そう心の中で願うも
「この俺がいくら美味えからって、テメェで饅頭買いにくると思うか?」
「む?違うのか?」
「違えよ。そいつ、そこにいる…まぁ俺の弟子だな。そいつが饅頭買いてぇっつうからこの俺が地味に着いてきてやったんだよ」
状況からして、"私の存在に触れない"なんて流れになる筈もなく、
「む?宇髄に弟子が出来たのか?それは是非とも紹介してもらいたいところだ!」
と、私が最もそうなって欲しくないと望んでいた方向へと見事に向かって行ってしまった。
お願い天元さん…断って!紹介するまでもねぇと…そう言って…!
そう心の中で念じるも、
「いいぜ。ま、大したやつじゃないがな」
"いいぜ"と返されたその天元さんの言葉に
大したやつじゃないって言うのなら…紹介なんてしないでよぉ!
と心の中で叫んだ。
そんな私を無情にも、
「おい!荒山!聞こえてんだろ!ぼーっと蒸気見てねぇでこっち来い!」
と、天元さんが私を呼びつけた。