第3章 未知との出会い、騒音との再会
「はぁ!?お前なぁ、遊びに来たんじゃねぇんだぞ?……と言いたいところではあるが、あいつ等のためなら話は別だ。特別に寄り道してやろう」
そう言って満更でもなさそうな顔をする天元さんに
「やった!ありがとうございます!それじゃあ行きましょう!」
と町のある方角へと身体の向きを変えた。
町に着くと、その様子はまだまだ活気に満ちているというには早く、営業を開始しているお店は本当にごく一部だった。
町の中央の通りを少し進み、飲食店が立ち並ぶ辺りを目指して進むと、目的のお饅頭屋さんが見えて来る。その店舗から漏れ出てくる、お饅頭を蒸している蒸気と、ほんのり香る餡子の甘い香りに、口内にじゅわりと涎が溢れてくる。
「あれ、あの店です。私、買ってきますので、天元さんはどこかほかの店を見てきても良いですよ?」
「んなこと言っても空いてる店なんざほとんどねぇだろ。仕方ねえから俺も行く」
そういいながらお饅頭屋さんに向かっていく天元さんの背中を見つめ、
あの風貌でお饅頭…ちょっと面白いかも
ニヤケそうになるのを我慢しながら私もその背を追った。
「いらっしゃい!いくつにします?」
そう尋ねてきた店員のおばちゃんに
「20個頂きたいんですが良いですか?」
そう私が答えると
「いやお前、いくらなんでもそりゃ買いすぎだろ」
呆れたような声で天元さんが言った。
「全然!本当はもっと買いたいくらいですから!ここの餡子、本当に後を引く美味しさがあって、2個も3個も4個もあっという間に食べられてしまうんですよ!」
私がそう熱のこもった声色で天元さんの言葉に反論すると
「おやまぁ嬉しいこと言ってくれるじゃないか。3つおまけしておくよ!」
「え!?良いんですか?ありがとうございます!」
そう興奮気味に答える私の背後で
「食い意地の張った奴め」
と、天元さんの呟いた言葉は、お饅頭をおまけしてもらえてご機嫌な私には少しも気にならなかった。