第17章 幸せな音が溢れる世界で
「雛鶴さんまきをさん須磨さぁぁぁん!!!」
私も3人へと近づいていき
ギュっ
と、いつかのように、4人で団子になってくっ付いた。
「おめでとう。とっても綺麗よ」
「…雛鶴さん」
「あぁ…でも…ぷっ…泣きすぎて、化粧が落ちてるじゃないか!直してあげるから、お直し道具持ってきな」
「…まきをさん」
「わぁぁぁぁぁん!嬉しいです!でも寂しいです!でもでもやっぱり嬉しいですぅぅぅぅ!」
「…須磨さん」
祝言から宴会へと切り替わった大広間の中心で、抱き合い団子になっている私たちは、ちょっと…いや大分、おかしいかもしれない。
それでも
「……ありがとうございます……私…雛鶴さんまきをさん須磨さんが…っ…それから天元さんも…心の底から…大好きです…!」
「私たちもよ」
「あたしたちもね」
「私たちもですぅ!」
大好きな宇髄一家に祝ってもらえ
”今この瞬間が今までの人生で一番幸せ”
と、思ってしまえるほどの幸せを、ただただ感じていたかった。
落ち着きを取り戻した私は、自分の席でのんびりと膳をつついていた。杏寿郎さんはと言えば、天元さんに連れていかれてしまい、蛇柱様や風柱様、それから水柱様とお酒を飲み交わしているようだった。
真昼間に皆で集まり
後のことなど気にせず
思う存分酒を飲む
こんな風に出来る日が来るのを、私たち鬼殺隊は、何10年…いや何100年と夢見て来た。
……なんて幸せな時間なんだろう
そんなことを考えながら、楽し気に笑っている杏寿郎さんを見ていたその時
ゴロゴロゴロ
……雷…?
雷鳴が聞こえた気がした。
手に持っていた箸を置き、ゆっくりと立ち上がった私は、襖を開け大広間を出た。
それから、着付けを施してもらった部屋から大広間まで続く廊下の途中にあった、遠くの空まで見渡せる縁側まで急いで足を進めた。
目的の場所にたどり着き、空を見上げると
……やっぱり…雷だ…
青くて広い空のほんの一部分に、灰色がかった雷雲が浮いていた。