第17章 幸せな音が溢れる世界で
天元さんの口から紡がれた言葉は
「ド派手に幸せになれよ」
あまりにも天元さんらしいそれで
「……っ…はい…!!!」
私は、言葉を発するのが困難になるほど、ただただ涙を流し続けた。
「お前にしては、いい返事だな」
天元さんは静かな声でそう言うと、私のコップにラムネを注いだ。
瓶に入っていた小さな泡を含んだ透明な液体は、すべて私の持っていたコップへと移り、空になった瓶を雛鶴さんがすかさず回収して行った。
クルリと振り返った天元さんは、右手に持っていた酒瓶を天井に向け掲げた。
「こっからは、ド派手に飲むぜぇ!お前ら準備はいいか!?」
「「「「おぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
打合せでもしていたのかと思ってしまうほど見事に声が重なった後
「乾ぱぁぁぁぁぁぁい!」
「「「「乾ぱぁぁぁぁぁぁい!!!!」」」」
皆一斉に、コップの中の飲み物を飲み干した。
そんな中で
「……っ…」
私だけは、飲み物を飲める状態ではなく、震える両手で並々に注がれたラムネの入ったコップを持ったままでいた。
そんな私の様子に
「ほら。いつまでも泣いていると、皆が心配してしまう。落ち着くかもしれないから、一口飲んでみなさい」
空になったコップを膳に置いた杏寿郎さんが、眉の両端を下げ、困ったように笑いながらそう言って来た。
「…ふ…っ…だって…」
「だってじゃない。…ほら」
杏寿郎さんに、背中と、コップを持つ手を支えてもらいながら、コクリと一口飲んでみる。
「…っ…甘くて美味しい…」
「そうだろう?」
「…っでも…涙は止まりません…」
「はは…仕方のない子だ」
杏寿郎さんはそう言うと、私の手からコップを優しく取り上げ、そのまま一気に飲み干した。
その直後。
「鈴音」
「鈴音!」
「鈴音ちゃん!」
私の手からコップが無くなるのを待っていたのか、大好きな3人が私の元へと近づいて来た。