第3章 未知との出会い、騒音との再会
私が編み出した響の呼吸はもう1つあった。
響の呼吸 参ノ型 音響明知
けれどもそれがより鮮明に気配を探る為の呼吸だと説明を始めるや否や、
”そんな地味な型の説明は必要ねぇ”
と一刀両断されてしまい、
頼まれたって絶対に天元さんの為には使ってやらないんだから
と内心毒をはきながら
「そうですか」
と最上級の作り笑顔を天元さんに向けて差し上げた。
-------------------------------
その日の夜。
「付いてこい。来れなきゃ置いて行く」
そんな呼吸に関するやり取りもあり、私はこの日初めて天元さんの夜の見回りに同行することとなった。
…っ確かに速い…でも置いて行かれるほどでは…ない
訓練を受ける前の私であれば、あっという間に引き離され、道端で一人置き去りにされていたかもしれない。それでも置いて行かれることなく、付いていけたのはここ1か月弱、訓練をきっちりとこなしてきた成果だ。
見廻りの間、天元さんは流れるように華麗な剣捌きで鬼の頸を跳ね、その鮮やかさ、そして初めて目にする二刀流での戦いにただただ目を奪われるばかりだった。
「よし。陽光も差してきた。そろそろ戻るぞ」
空に目を向け、私の方を見ることなく天元さんが言った。
「はい。…あの、もし時間が許すのであれば、確かこの近くの町に早朝から蒸し始めるお饅頭屋さんがあるんです。雛鶴さんまきをさん須磨さんへのお土産に…買いに行ってもいいですか?」
確かこの付近は、以前任務の際に訪れたことがあった。その時に偶然見つけたお饅頭屋さんのその味は、空腹と疲れという要因はあったとは思うが、"ほっぺが落ちちゃうかも"と思うほどに美味しかったと記憶している。
お土産を買いたいだなんて言ったら怒られそうだなぁ
とは思ったものの、私はどうしてもあのおいしいお饅頭の味を雛鶴さん、まきをさん、そして須磨さんに味わってもらいたかった。