第17章 幸せな音が溢れる世界で
杏寿郎さんがサラリと述べたそれらの言葉に
「…そう…なんですか…」
私の胸に残っていた”罪悪感”という名のしこりが、ポロリと剥がれ落ちたような気がした。
恥ずかしさで頬を赤く染めながら玄弥君の首を絞め引きずって行く風柱様も、首を絞められ苦しそうに顔全体を赤く染めている玄弥君も、互いにもの凄い顔になってはいるものの、なんだかとても楽しそうで
「……分かり合えたみたいで…よかったですね」
「うむ!」
自然とそんな言葉を口走っていた。
…しずこさんに、白髪で三白眼の傷だらけの男がおはぎを買いに現れるって…言っておかないと
そんなことを考えながら、2つ目のお団子を口に入れたその時
「鈴音」「鈴音さん!」
透き通るような綺麗な声と、鈴のようにかわいらしい声の持ち主の登場に、私は慌ててお団子を咀嚼し飲み込んだ。
「しのぶ!恋柱様!」
大好きな女性2人の登場に、私の心はパッと花が咲いたように華やいだ。
「本日はおめでとうございます。その色打掛…鈴音の雰囲気にぴったりと合っていて、とても似合っていますよ。煉獄さんも、いつも以上に凛々しいです。流石、あのお二人のお見立てですね」
「…馬子にも衣装でしょ?」
手に持っていた箸を置き、色打掛の見事な柄を見せるように左右に腕を広げると
「ちょっと待って」「ちょっと待ってくれ」
元師弟関係の2人…恋柱様と杏寿郎さんの声が見事に重なった。
そんな2人の顔を交互に見ながら
「……どうかしましたか?」
首を傾げそう尋ねる。
すると杏寿郎さんと恋柱様は同時に喋り始め
……だめだ…二人の声の波長が絶妙に重なり合ってて全然聞き取れない…!
私は思わず、天を仰ぎそうになった。
すると
「甘露寺さんに煉獄さん。その声量で同時に話されたら、残念ですが誰であっても聞き取れません。お一人ずつ、順番にお話してはいかがですか?」
しのぶがそんな助け舟を出してくれた。