第17章 幸せな音が溢れる世界で
風柱様は、私の額に置いたままでいた手をサッと退け
「むしろお前ェ…あの時もう腹に子がいたんじゃねェかァ?てめェの体調くらいちゃんと把握しとけや。腹の子になにもなかったから良かったものの、そうじゃねェ可能性もあったんだからなァ?これからはもっとしっかりしろォ」
怒ったように身体の前で腕を組みながら、何やら私の身体のことをものすごく気遣ってくれているように聞こえる言葉をかけてくれている。
風柱様のまさか過ぎるその反応に
「………」
目を見開いたままその顔を見つめていると
「なにぼーっとしてやがる」
気まずそうにスッと視線を逸らされてしまった。
すると、今までほとんど喋らなかった玄弥君が
「あの…兄貴は、母ちゃんが弟妹達を産んで来たのを1番側で見てきたんで…荒山さんの事を心配してるだけなんです!さっきの甘味も、兄貴はおはぎが大好物で、あまりに美味いあの餡子がのったおはぎを食べられたらと思っただけで…悪気はなかったんです!」
僅かに混乱をしているのか、先程私に見せてくれた気遣いの理由だけでなく、杏寿郎さんにしずこさんと倫太郎さんの甘味屋が何処にあるのか聞いた理由までも教えてくれた。
すると
「…っ玄弥てめェ!…何余計なこと言ってやがる!」
「…っグェ…兄ちゃ…苦し…!」
風柱様はその頬を赤く染め、玄弥君の首を後ろから締め上げると、ズルズルと自分よりも大きな身体を引き摺り、後退し始めた。
そんな玄弥君の姿を可哀想と思ったのはもちろんなのだが、それ以上に
……風柱様…おはぎが好きなんだ……意外
そちらの方が気になってしまい、助けなければと言う発想は出てこなかった。
ズルズルと引き摺られていく玄弥君の姿をぼんやりと見つめていると
「不死川は間も無く不死川少年と旅に出るそうだ!あの兄弟が再び共に過ごせるようになって俺はとても嬉しい。あの男は、非常にわかり難くはあるが、とても心の優しい男だ!先の会議でも、鈴音の身体の具合をいたく気にかけていた」
杏寿郎さんがそんな事を教えてくれた。