第17章 幸せな音が溢れる世界で
そう思っていたのはもちろん私だけではなく
「だァかァらァァァあ!そのしずこさんと倫太郎の団子が食える店は何処だって聞いてんだろうがァ!!!!」
額に青筋を立てた風柱様が、苛立ちを隠す事なく杏寿郎さんに向けそう言った。
「わはは!そうか!」
杏寿郎さんは右手の人差し指で自身の側頭部をポリポリと搔くと
「しずこさんと倫太郎殿の店は、蝶屋敷から北西にある山を4つほど越え、5つ目の山に差し掛かる手前の麓にある村の中にある!」
弟さん…玄弥君に、"兄ちゃん…!'"と相変わらず袖を引っ張られている風柱様に向けそう言った。
「山4つ越えるだァ?随分と遠いじゃねェか。任務で立ち寄ったかなんかかァ?」
私は風柱様のその問いに肩をピクリと動かし
……お願いだから…余計な事言わないでよ…!
と心の中から杏寿郎さんへと念を送った。けれども勿論、そんなものが杏寿郎さんに届くはずもなく
「あそこは鈴音が俺から逃げる為に「っあぁぁぁあ!もう!こんな楽しい席でそんな話をしないで下さい!」」
私は恥ずかしげもなく(まぁ確かに杏寿郎さんか恥ずかしがらなくてはならないような事は何もないのだが)あの時あった事を全て語り出してしまいそうな杏寿郎さんの言葉を、慌てて遮った。
風柱様はそんな私と杏寿郎さんにげんなりとした表情を向けた。
「……お前…まじで荒山の事好きなのな「まぁな!」……あァそうかい。だがまさか、お前みたいな堅物大真面目野郎が、先に子ども作っちまうたァ思ってもみなかったぜ」
「そうだな!鈴音と出会う前の俺ならば、間違いなくそのような事はしなかっただろう!だが順番や体裁…そんなものはどうでも良いと思ってしまえる程、俺は鈴音が欲しくて欲しくて堪らなかった。故に、なんの後悔もない!」
杏寿郎さんの真っ直ぐ過ぎるその言葉に
「……っ…!」
私と
「………」
何故か玄弥君も、赤面し黙り込んでしまう。