第17章 幸せな音が溢れる世界で
そんなしずこさんに、今回の席で振る舞う甘味として、しずこさんと倫太郎さんのお団子を出したいとお願いしたところ
"もちろんだよ!任せておきな!"
いつに何個必要なのかを聞くこともせず、そんな返事をくれたのだ(倫太郎さんも無言で何度も何度も頷いていた)。
その言葉に甘えさせてもらい、私があのお店で最も好きだった餡子の団子を注文させてもらい、大変申し訳ないが、隠の任は解かれたものの、産屋敷家にそのまま仕え続ける事を決めた隠の方に、この会が始まる前に取りに行ってもらったのだ。
「…はぁ…久しぶりのしずこさんのお団子……いただきます」
串に刺された見覚えのある姿とは違い、綺麗な小皿に6つ盛り付けられた状態の団子を箸でひとつつまみ、それを口へと運んだ。
「…ん…やっぱり…美味しい…」
うっとりしてしまいそうなほど甘くて口溶けのいいこし餡に、私の頬はあっと言う間に緩んでしまう。
もぐもぐと咀嚼したそれを飲み込み、さてもうひとつと手を伸ばしたその時、視界が影になった。そして
「オイ」
声をかけられ
「……へ?」
団子に向けていた視線を上げる。
するとそこにいたのは
「…っ風柱様…!」
私をジッと睨むように見ている風柱様と
「…っ…兄ちゃん…後にしなって!」
その隣で、風柱様の着流しの袖を両手で掴み、それを引っ張っている不死川君…つまりは弟さんの姿だった。
まさかの風柱様の登場に、驚き固まっていると
「不死川に不死川少年!旅立ち前の忙しい時期に時間を作ってくれありがとう!食事は楽しんでいるだろうか?」
杏寿郎さんは驚いている私のことなど全く気にする様子もなくそう尋ねた。
「…まァな。で、聞きてえんだがよォ」
「なんだ!」
「今そいつが食ってるその団子」
「団子か!団子が何だ!」
「…んとにうるせェ奴だなァ…その団子、どこの団子だァ?」
「これか?これはしずこさんと倫太郎殿の団子だ!」
隣でそんな会話を聞いていた私は
……杏寿郎さん…そうだけど…そうじゃないよ…
団子を見つめ、心の中でそう呟いた。