第17章 幸せな音が溢れる世界で
すると
「っしゃぁ!待ってたぜ!改めて全員で乾杯するからちょっと待ってろ!」
天元さんがそんな言葉と共に立ち上がり、雛鶴さんまきをさん須磨さんを引き連れ、意気揚々と部屋を出て行ってしまった。
「それじゃあ天元達が戻ってくるまで、食事とお喋りでも楽しんでようか」
そんな言葉と共に輝利哉様が目の前にある膳に手を伸ばし始めると、それを皮切りに、みんなも食事、それから談笑を再開し始めた。
そんな様子を確認した私と杏寿郎さんは、ゆっくりと腰を下ろし
「全部美味そうだ!どれから手をつけようか迷ってしまうな」
「本当ですね!でも私はやっぱり…このお団子!これを1番最初に食べたいです!」
綺麗に並べられた膳へと手を伸ばした。
「よもや団子からいくとは…君は本当に団子が好きだな」
杏寿郎さんは、団子を片手にニコニコしている私を楽しげに見つめながら、芳しい香りを放っている鯛飯を一口頬張った。
そして
「美味い!」
お決まりの決め台詞を放つ。
「だって!これはただのお団子じゃありません!これは、しずこさんと倫太郎さんが今日の為に特別に作ってくれたお団子ですよ!?これを1番最初に食べずして、他のものは食べれません!」
そう。この甘い餡子がたっぷりとのったお団子は、しずこさんと倫太郎さんが、今日のこの会の為に特別に作ってくれたものだ。
今私たちが口にしているのは、所謂"祝膳"というものに近しいものにはなっている。けれども、杏寿郎さんをはじめ、食欲旺盛な男達はそんなものじゃあ腹が満たされない。
なのでその他に、宴会の席で振る舞われる大皿や、甘味も多めに準備した方がいいと言う話になり、夫婦になり、子を授かった…いや、子を授かり、夫婦になった報告を兼ね、しずこさんと倫太郎さんの元を久方ぶりに訪ねたのである。
杏寿郎さんの口から私との事を聞いたしずこさんは
"やっぱりかい!あたしはそうなるんじゃないかと思ってたんだよ!"
と、それはもうこちらも釣られて笑顔になってしまうような満面の笑みを浮かべながらそう言った。