第17章 幸せな音が溢れる世界で
……私は…なんて馬鹿なの…!
杏寿郎さんの動きに集中し、杏寿郎さんが次に何をしようとしているのか、何が行われようとしているのか、とにかく把握しなければならないとその気配を懸命に探った。
下げていた頭を上げる杏寿郎さんの動きに習い私もそうすると、にこやかな表情でこちらを見ている輝利哉様、くいな様、そしてかなた様と視線が合った。
「輝利哉様、くいな様、かなた様!本日は俺たち夫婦の為にこのような機会を設けていただいたこと、心より感謝申し上げます」
そう言いながら再び頭を下げた杏寿郎さんに合わせ、私も慌てて頭を下げた。
すると輝利哉様は
「杏寿郎。そんなに風に堅苦しく挨拶する必要はないよ。ほら。鈴音がとても緊張してしまっているよ」
自分よりもかなり年下とは信じ難い、大人びた笑みを浮かべながらそう言った。
「お気遣いありがとうございます!」
杏寿郎さんはそう言うと、お三方へと向けていた身体を正面へと戻し
「皆今日はこうして集まってくれてありがとう!まず初めに報告させて欲しい!俺と鈴音は、先日夫婦となる契りを交わした!あの鈴音が、ようやく俺の妻になってくれたんだ!そしてもうひとつ!鈴音の腹に、俺との子が宿っている!このような幸せが同時に訪れるとは…俺は今、幸せで幸せで堪らない!」
先ほどの堅苦しい挨拶とは程遠い、個人的な心境がたっぷりとつめ込まれた話をし始めた。
今日この場に来てくれた柱の方々、善逸、炭治郎君、伊之助君、栗花落さん、不死川君、アオイさんにすみちゃんなほちゃんきよちゃん、槇寿郎さんに千寿郎君、それからもちろん雛鶴さんまきをさん須磨さん…みんなの反応が非常に気になるところではあったが
「…っ…ちょと…何言ってるんですか…!」
杏寿郎さんの言っている事があまりにも恥ずかしく、私の意識はどうしても杏寿郎さんの言動に持っていかれてしまう(”派手に惚気てやがるな”…と呆れている天元さんの声ははっきりと聞こえそれが私をよりいたたまれない気持ちにした)。