第17章 幸せな音が溢れる世界で
「すみません!ですが鈴音の晴れ姿を皆と共に見れると思うと嬉しくて!」
「何を言っている。お前も見られる立場にあたるだろう」
「そうですが、俺はあくまで鈴音のおまけのようなもの!ちなみに日取りはもう決まっています!」
さらりと杏寿郎さんが言ってのけた”日取りはもう決まっています”という言葉に
「え!?!?」
私は大声を出し反応してしまう。
槇寿郎さんの前ではしたない…と思いはしたものの、今はそれどころではない。
私は、すぐ隣にある杏寿郎さんの隊服の袖をグイッと引っ張り
「日取りが決まってるってどういうことです!?…っていうか、日取りが決まってるってことは、やらない選択肢なんてそもそもないんじゃないですか!」
文句の言葉を述べた。
杏寿郎さんは、そんな私から視線を逸らすように明後日の方向を見ると
「選択肢がなかったわけじゃない。だが鈴音なら、最終的に俺の願いを聞き入れてくれると思った!」
両腕を身体の前で組み、自信満々な様子でそう言ってのけた(そんな杏寿郎さんの様子に、槇寿郎さんは額に手をあて呆れかえっている)。
「……あのですねぇ…」
久方ぶりに味わう強引すぎるその行動に、がっくりと項垂れてしまった私だが
…そうだ…杏寿郎さんは最初からこういう人だった…人の意見を聞いているようで聞いてなくて…頑固で……でも…そんな杏寿郎さんのそばにいたからこそ…子どもの頃から止まっていた私の時間を……進めることが出来たんだ
その信じられない程の強引さに何度助けられたか、前を向かせてもらったか、それから愛をもらったか…言い尽くすことは難しい。
そして、今までの出来事を振り返れば振り返る程
こんな素敵な人に愛されて
私はなんて幸せ者なんだろう
そう実感させられるのだった。