第17章 幸せな音が溢れる世界で
杏寿郎さんの口から発せられた言葉に、私は小さな熨斗目模様のお着物に向けていた視線を、慌てて杏寿郎さんへと移す。
そして
「…祝言を…挙げるんですか…?」
目を大きく見開いたまま、杏寿郎さんにそう尋ねた。
「うむ!鈴音の身体の事を最優先に考え、形式ばったものでない、お披露目会程度のものにとどめるつもりだがな!場所は、輝利哉様達が現在住んでいるお屋敷を使って欲しいとのことだ!」
「…っ…そんな…」
婚礼の衣装を準備してもらっていただけでなく、場所まで提供してもらうのは流石に気が引けてしまい
「…そこまでしてもらって…いいんでしょうか…?」
私は、上目遣いになりながら杏寿郎さんにそう尋ねた。すると杏寿郎さんは、穏やかな笑みを浮かべ
「やはり鈴音は、いつまで経っても鈴音だな」
と、何とも意味ありげに言って来た。
私はその言葉に
「……何それどういう意味です?」
槇寿郎さんの前であるにも関わらず、ムッと口をとがらせながら杏寿郎さんにそう問いかけた。
「わはは!そう不貞腐れるんじゃない!」
杏寿郎さんはそう言いながら”…だって”と呟いた私の頭頂部に手を置いた。
「言っただろう?形式ばったものでなく、我ら鬼殺隊の悲願を遂げた祝いの会の延長位の気持ちでいいからやってもらいたいと、輝利哉様が言っていた!」
「… 輝利哉様が…本当にそうおっしゃったんですか?」
「うむ!柱の皆も、その意見に賛同してくれていた!」
「……そう…言われても…」
最後の戦いにまともに参加すら出来なかった私が…そんな風に祝ってもらってもいいの…?
そんな考えがぐるぐると頭の中を駆け巡り、なかなか首を縦に振ることが出来なかった。
どうするべきか答えを出せず、視線を下げてしまったその時
「私も、皆と同じ意見だ」
私と杏寿郎さんのやり取りを黙って聞いていた槇寿郎さんが、その口を開いた。