第17章 幸せな音が溢れる世界で
その結果
"あなたまた太ったでしょう?無理のしすぎはもちろん駄目だけど、何もしなさ過ぎるのも駄目"
週一で身体の様子を見てもらっていたしのぶに(忙しいだろうからもっと診察の頻度を少なくしてもらっていいと言ったんだけど)怒られる始末で、しのぶはかなり私の体調のことを気にかけてくれていた。
それなのに
"ちゃんと栄養がつくもの食べてる?"
"こき使われるような事があればすぐこっちに来るんだよ?"
"産前産後はうちで過ごしてくださいね!?"
雛鶴さんまきをさん須磨さんまでもが私を甘やかそうとする始末だ。
みんな私に過保護過ぎる
私がそんな危機感を覚える中、まともな感覚を持っていたのは
"……お前らみんな、なんなわけ?"
天元さんと
"姉ちゃん…もう俺たちのところ来た方が良いんじゃない?"
意外にも善逸だった。
とまぁそんな日々を過ごしていた私だが、杏寿郎さんもすっかりと元の身体に戻り、私も体調が安定すると言われる時期を迎え、この上げ膳据え膳の日々からようやく抜け出せることとなったわけだ(誤解しないで欲しいが煉獄家が嫌だったわけでは決してない)。
荷物をまとめ終え
……これで後は…玄関に持っていけばお終いだ
私は、自分の荷物を包んだ風呂敷を手に、玄関の方へと向かった。
1つ目、2つ目と荷物を分けて運び、3つ目…最後の風呂敷包みを持ち玄関にたどり着いたその時
ガラッ
と玄関が開き
「…っ鈴音さん!ただいま戻りました」
「おかえり千寿郎君」
2冊の本を抱えるように持つ千寿郎君が学校から戻って来た。
私と挨拶を交わした千寿郎君は、めざとく玄関に置いてある私の風呂敷包み、それから手に持っている3つ目のそれを見つけると
「……まさか鈴音さん、それを自分で運んだりなんかしてないですよね?」
不安気な表情を浮かべ私に問いかけて来た。
そう問われた私は、思わず苦笑いを浮かべ
「もう…これくらい自分で出来るよ?そんなに心配しなくても大丈夫!」
そう言いながら、手に持っていた風呂敷包みを他の包と纏めるように置いた。