第17章 幸せな音が溢れる世界で
すると、そっくりな髪型の、そっくりな3人が同時に私の方へと振り返って来たので
……やだ…笑っちゃうから同時に振り返ってこないでよ…!
私は、思わず吹き出しそうになるのをグッと堪えた。
心を落ち着かせようと目を瞑りながらコホンと咳払いをした私は、再び視線を正面へと戻し
「私、一度音柱邸…と、杏寿郎さんのお邸に戻ります」
と、声をかけた。
すると杏寿郎さんはあからさまに不満気な表情を浮かべ
「何故だ?」
そう問いかけて来た。
「何故って…私、手ぶらですよ?着替えも何もない状態で、ここにいさせてもらうのは…流石に無理です」
緊張はするものの、ここまで来たら流石に腹は括っている。けれども、着のみ着のままここまで連れてこられた状態ではどうしようもないのが現実である。
「確かにそうだな!だが心配はない!」
そう言った杏寿郎さんは満面の笑みを浮かべており、私は思わず首を傾げてしまう。
……何をそんなに笑ってるんだろう…?
内心そんな事を考えながら杏寿郎さんを見ていたが
「その必要はねぇよ」
背後から突然聞こえて来たその声に
「……っ!?」
私はビクリと肩を上下させてしまう。
その声の持ち主はもちろん
「お前の荷物なら、この俺様が持って来てやったぜ?…たくよぉ。俺様にこんな事させんの、お前らくらいだっつぅの」
私の師範である天元さんだった。
「宇髄!すまないな!」
「すまないっつぅくらいなら、こんなこと頼んで来んじゃねぇよ。後で高ぇ酒持ってこいよ?」
「うむ!」
そんなやり取りから、いつの間にそんな連絡をしたのか全く見当はつかないが、杏寿郎さんが天元さんにそうしてもらえるように頼んでいた事が伺い知れる。
天元さんはズンズンと私の前まで歩い来ると
「ほれよ。俺は持って来ただけで、お前の荷物を纏めたのは嫁達だからな?変な心配すんなよ?」
風呂敷に包んである私の着替えと思われるものを、ズイッと押し付けるように渡して来た。