第3章 未知との出会い、騒音との再会
「何ぼんやり見てんだよ。さては俺の顔がかっこ良すぎて見とれたか」
「…そう思いたいなら、どうぞご自由に解釈してください」
私の感動を返して欲しい。
思わずそんなことを思ってしまうのだった。
「っとに可愛げのないやつ!じゃあやるぞ…」
天元さんは私から視線を外し、丸い石がある方向に身体の向きを変える。
そして、肆ノ型を放つためにすぅぅぅっと息を吸う。それと呼吸を合わせるように私もすぅぅぅっと肺に空気を取り込む。
音の呼吸 肆ノ型 響斬無間!
……響の呼吸弐ノ型 共響音陣!
一呼吸待ち私は型を放った。
「っおい!お前今…何したんだ!?」
天元さんが珍しく驚いた様子で、私にそう尋ねてきた理由は1つ。
「いつもの俺が放つ肆ノ型と…威力が違ぇ…」
私の放った響の呼吸の効果に驚いたからだ。
「今使った響の呼吸の型は…その詳しい原理はわからないんですけど、多分音の発する空気振動とかを利用して、自分以外の誰かが放った攻撃の威力を増すことが出来るみたいなんです」
何度か偶発的にその現象が起こることがあり、任務の同行者が
”なんかいつも放ってる型より…強い気がする…?”
と首をかしげている場面に遭遇していた。はじめは、その原因がまさか自分のあるとは思っておらず
”ふぅん。そんなこともあるんだ”
位に思っていた。
けれども、自分がいる場で、何度かその現象が続けば、もしかして私が?という結論にたどり着いてもおかしくない。それに、その現象が起こるときは、大抵私は仲間の後方支援に当たっている場合が多く、仲間がもし攻撃を損じた時の為、型を放つまではいかないが、いつでも放てる位の姿勢を取っていた。
おそらくその際、無意識に呼吸をしてしおり、そこからこの型が自分でも知らないうちに出来上がっていたようだ。
「仲間が放った型の威力を増す。これが響の呼吸の弐ノ型です」
そう言った後、隣にいた天元さんの顔を見上げると
「…なんです…その顔」
天元さんは、まるで憐れんでいるような、そんな表情で私のことを見ていた。