第3章 未知との出会い、騒音との再会
「無意識に出来てしまったどの型を使っても、斬撃が波状に広がっていくんです。しかもしっかりと箏みたいな音も出るし。箏の音が響くように斬撃が広がっていく。だから私は、心の中で自分のそれを、"響の呼吸"と…そう呼ぶようになりました。実際にやって見せるので…須磨さん、そこの枝を軽く私に投げてもらえますか?」
「わかりました!それじゃぁ行きますよぉ」
そう言って、須磨さんが私に向けて投げた枝に向け
響の呼吸壱ノ型 広響箏音
自分が独自に編み出した型を放った。私の日輪等から放たれた斬撃が、音を発しながらがその枝を捉えると
ボロボロボロ
と枝の端からその形を崩していく。
「へぇ…面白ぇじゃん!だが、あんまり強そうじゃねぇな」
「…そうなんですよね」
天元さんの言う通りだった。
「実際問題、雷の呼吸の型よりも強さも速さもまだまだ劣ります。使いどころも…まだ見極め段階です。身体には…凄く馴染んでいる気がするんですけど」
そういって苦笑いを浮かべる私に
「でもでも!自分自身でそこまで編み出して、形にしただけでも凄いと思います!そんな風に落ち込む必要なんてありません!」
「…須磨さん…」
「そうだな。お前は雷の呼吸も使えんだ。うまく使い分けて、必要に応じてどの型を選ぶか決めりゃいい」
珍しく優しい言葉をかけてくれる天元さんにきょとんとしていると
「なんだよ。んな阿保顔してねぇで、他もあるんならさっさとみせろ」
「…っはい。それじゃあ次は…天元さん、音の呼吸の肆ノ型を出してもらっても良いですか?」
私がそう天元さんにお願いすると
「は?なんでだよ。地味に面倒臭えなぁ…」
と文句を言いながらも、私の方に近寄って来てくれる。
「で、どの辺でやりゃ良いんだ?」
じっと私を見下ろしながらそう言う天元さんに
「えっと…どうなるか私も予想がつかないので…」
「はぁ!?なんだよそれ!?なんでわかんねぇんだよ!」
「だって、初めてなんだから仕方ないじゃないですか!あっち!あっちの丸い石が落ちている辺りにお願いします!」
「はいよ。…まったく。弟子のくせに師匠に指図しやがって」
「…っ」
天元さんのその言葉に
私のこと…弟子だって思ってくれてるんだ
その事が、私には酷く嬉しかった。