第17章 幸せな音が溢れる世界で
私は、布団に潜り込み、たんぽぽのように黄色い頭だけが見えている善逸のベッドへと近づいていく。そんな私の後を、杏寿郎さんも、すっかりと使い慣れたように見える松葉杖を使いながら着いてくる。
善逸のベットの横まで来た私は
「善逸」
布団の中に隠れながら私に背を向けている善逸に声を掛けた。
「……何さ」
布団に潜り込みながらも返事をしてくれる善逸の様子に、私は思わずホッとしてしまう。
「…来るのが遅くなっちゃってごめん。善逸には会いたかったんだけど…杏寿郎さんと会う勇気が、中々でなくてさ…」
露わになっている黄色い頭を撫でながらそう言うと
「…わかってる…わかってるけど…姉ちゃんが全然見舞いに来てくれなくて、俺めちゃくちゃ寂しかったんだからね?」
善逸は、顔の半分を隠しながらも、くるりと身体を反転させ私の方を向いてくれた。
私は、そんな善逸と視線の高さが合うようにベッドの横でしゃがむと
「ごめんね。それでね、ここに来たのは……聞こえてたとは思うけど、善逸に、きちんと報告したいことがあるからなの。聞いてくれる?」
と、問いかけた。
すると善逸は
「あんな大声聞こえない人なんかいるわけないじゃん。…でも、俺も、きちんと姉ちゃんの顔を見ながら聞きたい」
そう言いながらムクリとベッドから起き上がった。
「…うん。……善逸」
「なぁに、鈴音姉ちゃん」
「……私ね、杏寿郎さんと夫婦になることにしたの」
「…うん」
「今までたくさん心配掛けてごめん。迷惑掛けてごめん。…でもそれ以上に……こんな私を姉ちゃんって慕ってくれて…守ってくれてありがとう」
そう言いながら善逸の頭をギュッと抱き寄せると
「……なにお礼なんて言ってんの?俺は姉ちゃんのたった1人の弟弟子だよ?そんなの当たり前じゃん」
善逸も、私の背中に腕を回してくれた。
すると
「俺からも、我妻少年に改めて報告させてほしい」
今までずっと口を閉じていてくれた杏寿郎さんが、その口を開いた。