第3章 未知との出会い、騒音との再会
「…すみませんね気持ち悪くて」
ジーっと目を細め天元さんを睨みつけていると
「鈴音ちゃんごめんね。天元様は照れているだけなの」
「あんたがそんな風に天元様に言うの初めてだからねぇ」
「照れている天元様…可愛いです!素敵です!」
そんな事をニコニコと言う3人の奥様達に
「…余計な事…言うんじゃねぇよ」
天元さんが歯切れの悪い口調でそう言った。
天元さんと場所を入れ替わり、私はまず初めに腰に差し込んである日輪刀の柄に手を掛け
「これが、私の刀です」
スッと抜き、刀身を天元さんに見せるように横向きにして持った。
「ほぉ…雷っぽい雰囲気はあるが、確かに違う」
天元さんは私の方に近づいてくると、顎に手を当て、ジーっとその刀身を見つめながらそう言った。そしてしばらくその様子を観察した後
「で、お前は自分の”その呼吸”を何の呼吸だと感じる?」
初めて出したその型は、ほぼ無意識に出てきたものだった。
ちょこまかと動き回る鬼の、次の動きを予測するためにその発する音を聴きながら陸ノ型を使ったとき
…っ何!?いつもと…違う!?
自分が鬼へと向けて繰り出した攻撃が、いつもの広範囲に及ぶ斬撃状のものとは違い、まるでボロボロと細かく削り取って行くように見て取れた。
そしてその自分でも知らないその攻撃を放った際、"テーン"と箏の弦を弾いたような音が聴こえた気がした。動揺で斬り損じてしまった鬼の頸を霹靂一閃でしとめ、何やらぶつぶつと言っている鬼の言葉を完全に無視し、崩れていく鬼の身体をぼんやりと見つめ
さっきのは…いったい何?
そんなことを思ったのが一番最初に私が独自の呼吸の型を放った時の出来事だった。
「…"響の呼吸"」
「「「ひびきの呼吸?」」」
重なる3人の疑問を含んだ声。
「へぇ…お前らしいじゃん」
その一方、天元さんはどうしたらそんなに筋肉がつくのかと聞きたくなるような太い腕を組み、ニヤリと笑っていた。