第17章 幸せな音が溢れる世界で
扉を開け視界に入って来た光景に
「…っ!!!」
思わず息を呑んだ。
私は、部屋の中にいるのはてっきり杏寿郎さんと蛇柱様の2人だと思っていた。けれども実際中にいたのは、杏寿郎さんに蛇柱様、それから
……槇寿郎さんに…千寿郎君…!
その4人だった。
扉に手を掛けたまま、ピシリと石のように固まってしまった私の様子に、槇寿郎さんと千寿郎君は戸惑っているようだった。
杏寿郎さんは、そんな私の所へと、松葉杖をつきながら近づいて来た。それから私の隣に並ぶように立つと、上手に身を屈め、私の左耳へと口元を寄せた。
そして、私にしか聞こえないような声量で
「すまない。急いで要を飛ばそうとしたが間に合わなかった」
と、依然として戸惑っている私に向け謝罪の言葉を述べてきた。
「…いいえ。遅かれ早かれ、会ってご挨拶する必要があったので…丁度いいです」
私は、緊張で震えそうになる手をぎゅっと握りしめ、私の顔を心配げに見つめる杏寿郎さんのそれを見つめ返す。
…こんなことで戸惑ってる場合じゃない……きちんとこの子のことを話して…二人に、杏寿郎さんの妻になることを許してもらわないといけないんだから
私は
すぅぅぅ…はぁぁぁ
と、一度大きく深呼吸し、先ほどまで杏寿郎さんがいたベットの横で訝し気な表情を浮かべている槇寿郎さんと、不思議そうに首を傾げている千寿郎さんをじっと見据えた。
すると蛇柱様は、これから私と杏寿郎さんが何を話そうとしているかを察知してくれたのか、徐にベッドから降り、今度は、”甘露寺のところに行ってくる”と言いながら、扉付近にいる私たちの方へと近づいて来た。
そんな蛇柱様に
「何度もすまんな!小芭内!」
杏寿郎さんがそう声を掛けると、蛇柱様は”…しっかりな”と、優し気な声色で言いながら部屋の外へ出て行き、私が開けっ放しにしていた扉を静かに閉めた。
…………よし
蛇柱様の気配が遠のいたことを確認した私は、一歩前に踏み出すと
「あの……まずはじめに、先日は、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
丁度正面にいる槇寿郎さんに向け、頭を下げた。