第17章 幸せな音が溢れる世界で
杏寿郎さんと蛇柱様と共に元の病室に戻った私は、何やら不満げな杏寿郎さんを半ば無理矢理ベットに押し込み、そのまま病室を後にしようとした。
けれども
”……もう帰ってしまうのか?”
と、杏寿郎さんにそれはもう悲し気に言われてしまい、扉に向け進めていた足を思わず止めてしまった。
それでも
”杏寿郎さんも蛇柱様も、ここに私がいたらゆっくり出来ないでしょう?また後で来ますから”
と、心を鬼にし返事をした。けれども、普段刺々しい蛇柱様は、杏寿郎さんにはとても甘いらしく
”……俺のことは気にするな。杏寿郎と一緒にいてやれ”
意外なことに、そんな風に言われてしまった。それでも流石に、気にせず居座るということなど出来るはずもなく
”…それじゃあ……また、3時頃に来ます。それでいいですか?”
と、妥協案を出してみた。すると杏寿郎さんは
”…わかった!待っている!”
渋々ながらも納得してくれ、私はこれ以上蛇柱様に、それからしのぶに迷惑を掛けずに済むと、胸を撫で下ろしながら病室を後にした。
この妥協案が、盛大な過ちであることなど露知らず。
音柱邸に戻った私は、天元さんに、無事杏寿郎さんに子が出来たことを伝えられたこと、そしてそれを受け入れてもらえたことを報告した。
天元さんは、もじもじしながらそれを伝えた私に
”んなもん初めからわかり切ってたわ。わかってなかったのはお前ぇひとりだこのお騒がせの大馬鹿野郎。いつでも出ていけるようにさっさと荷物纏めておけ”
と、ほぼ一息で言い切り
”やっとあいつらと心置きなくイチャコラ出来るぜ”
なんてことも言っていた。
鬼との戦いが終わり、4人の約束がようやく果たせるという時に居座ってしまった為、天元さんにそう言われてしまうのは当然のこと。
私は
”お騒がせして本当にすみませんでした”
と、謝罪の言葉を述べ、今すぐ荷物を纏めて杏寿郎さんの邸へ行くことを伝えた。