第17章 幸せな音が溢れる世界で
……風柱様がそう思うのも当然だよね
等と他人事のように思っていた私だが
"妻を迎えると同時に子まで出来たんだ!このような幸福が一遍に訪れ、夢じゃないかと思わない方が難しい!"
という杏寿郎さんの言葉に
「…っ!?」
横にしていた身体を急いで起こした。
急いでベットから降り個室から出て、急足で隣部屋に向かっている間にも
"…そりゃめでてェがよ…だからってんなこと頼んで来る馬鹿ァ滅多にいねェよ"
"気持ちはわからなくもないが、杏寿郎。お前は少し落ち着いた方がいい"
"俺は落ち着いている!"
会話が続いて行く。
けれども
"落ち着いている人間はそんな事を他人に頼んだりはしない"
"…不死川と伊黒がしないと言うならば、俺がしてやろう"
"はァァァア!?お前さっきまで黙り腐ってたくせになんだァ!?"
"そうだ。そもそも貴様などが杏寿郎の頬を抓るなど言語道だ…っオイ冨岡!"
会話が途切れたことから、水柱様が杏寿郎さんの頬を抓っているのだろうと言うことがなんとなく想像出来き
……嫌な予感しかしない…急がないと!
私は失礼を承知で
「…っ杏寿郎さん!」
許可を得る前に、部屋の扉を開いた。
すると目に飛び込んできたのは、水柱様に頬を抓られた杏寿郎さんの姿。そんな2人の向こう側には、酷く呆れた顔のままベッドに腰掛けている風柱様と、青筋を浮かべながら、水柱様を物凄い形相で睨みつける蛇柱様(と、白蛇)の姿が確認できる。
私が来たことに気がついた杏寿郎さんは、水柱様に頬を抓られた状態のまま、扉に手を掛けたままの私の方へと振り返ってくると
「…っ痛い!つまりは夢じゃない!俺は愛おしい妻と子!両方同時に手に入れることが出来たんだ!」
目をキラキラと輝かせながらそう言った後
「やった!やったぞぉぉぉぉお!!!」
「…っ!!!」
部屋中…いや、蝶屋敷中に響き渡りそうな雄叫びを上げた。