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音の溢れる世界でいつか【煉獄さん】【鬼滅の刃】

第17章 幸せな音が溢れる世界で


「あらあら。わがままなことを言う人が多くて困りますね。わかりました。すぐ行きましょう」


しのぶさんはそう言い終えると、私の方へとクルリと振り返ってきた。


「ということで、また後程、ゆっくり話しましょうか」

「はい」


私の返事を聞いたしのぶさんは、扉の方へと足を進めて行く。私もそれについて行き、そのまましのぶさんの部屋を出た。


「で、これから煉獄さんのお部屋に行かれるんですか?」


しのぶさんが、私に背を向け、部屋の鍵を閉めながらそう尋ねてくる。


「……はい」


しのぶさんと話したことで、心の整理は着いた。あと私がすべきことは、杏寿郎さんと話をすることのみ。


「そうですか。煉獄さんは、以前列車の任務の後療養していた部屋にいます。あいにく伊黒さんと相部屋なので、もし必要があれば鍛錬場を使ってもらって構いません」

「ありがとうございます」


頭を下げ”それでは”と挨拶を済ませると、その部屋がある方へ向かうため、クルリと方向転換をした。

その時


「頑張ってね…鈴音」


私の背中に投げかけられたその言葉に、慌てて振り返る。すると、私のことを穏やかな表情で見ているしのぶさんと目が合った。


「……頑張ってくるよ…しのぶ」


しのぶと私、最後にもう一度微笑み合うと、しのぶはアオイさんと共に大部屋へ、私は、杏寿郎さんがいる個室仕様の部屋が並んでいる方へと向かった。























音柱邸から蝶屋敷までくる際はあんなにも緊張していたのに、しのぶさん…じゃなくて、しのぶの部屋から杏寿郎さんのいる病室に向かっている今は、すっかりと気持ちが落ち着いていた。

一歩、また一歩と近づくにつれ色濃くなる杏寿郎さんの気配に


……早く…顔がみたいな


とすら思う程だ。

廊下を歩き続け、私はとうとう蝶屋敷の一番奥にある病室の扉の前にたどり着いた。

正面にある扉をじっと見ながら立ち止まり、ほんのわずかだが膨らみを感じるようになった下腹部に手を添え


……遅くなってごめんね…この扉の向こうにいるのが杏寿郎さん…あなたの父様だよ


と、心の中で話しかける。

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