第17章 幸せな音が溢れる世界で
ひとりになった私は
……ふぅ
と一度息を吐き、しのぶさんの自室がある方へと足を進めた。
しのぶさんの自室の前まで来た私は、失礼かなと思いつつも中の気配を探らせてもらった。
すると、中からは一か所にじっと留まっているしのぶさんの気配がはっきりと感じ取られ、すみちゃんが教えてくれた通り、部屋で休憩していることが窺い知れる。
ドキドキと波立心を落ち着かせるように
すぅ…はぁ…
と軽く深呼吸をした私は
……コンコン
と、目の前にある扉を叩いた。
すると
”……どなたでしょう?”
と、中から返事が聞こえて来た。
「……荒山です。休憩中のところすみません。少しだけよろしいでしょうか」
恐る恐る声を掛けると、先ほどまで穏やかだったしのぶさんの気配が急にざわつき始め
パタパタパタっ
と、扉の方へと急接近してきた。
そして
ガチャっ
と、扉が開くと
「……鈴音さん…!」
あまり見たことのない、驚いた表情をしたしのぶさんと目が合った。けれどもその表情は、すぐにいつもの見慣れた穏やかなそれへと戻り、なんだかホッと安心してしまう。
……っ…安心してる場合じゃない…私はここに、しのぶさんに謝るために来たんだから…!
グッと歯を食いしばり
「…っ…あの…!」
と喋り始めようとしたその時。
しのぶさんが、私の言葉を静止するように、右手のひらをスッと私の顔の前に伸ばした。そしてそれから
「中に入ってください。…座りながら、ゆっくり話しましょう?」
と、言ってくれた。
私は、しのぶさんに従い、一旦口を閉ると”…はい”と返事をした。するとしのぶさんは、半分ほどしか開けていなかった部屋の扉を全て開き
「どうぞ、入ってください」
と、部屋の中に入るように諭してくれた。
「…失礼します」
恐る恐る部屋に入ると
「あまり人を呼ぶ機会も無いので、私の椅子しかないんです。ですから、そこに座って下さい」
しのぶさんは、ベッド指差し、そこに座るよう私を促した。